モーション・コントロール・キャメラの製作
キャメラのコンピューター制御
(文責:高山カツヒコ)



  モーション・コントロール・キャメラ。
  特殊撮影(SFX)に興味のある方なら聞き覚えのある名称だと思います。
  スターウォーズの宇宙戦闘シーンの撮影のためにジョン・ダイクストラによって開発され、それまでのSFX技術では不可能だったシーンを紡ぎだし、以後のSFX技術に多大な影響を与え、その後のSFXにはなくてはならない機材となったSFX界の神器とも言える特種機材です。
  近年、ハリウッド映画でやたらと話題にのぼるCG特撮と呼ばれる技術の中にも、実はモーション・コントロール・キャメラで撮影したミニチュアをデジタル・マットで合成しただけのモノが少なくないのも、詳しい方なら既にご存知だと思います。
  このモーション・コントロール・キャメラ、本来、とても高価な精密機械なのですが、原理自体は実は結構簡単なものだったりします。

  そのモーション・コントロール・キャメラをアマチュアが自主映画用に作る事はできないだろうか? 何の気ない思いつきですが、不可能な事ではありません。 そう思った学生時代の私は、手持ちの機材で8mm用モーション・コントロール・キャメラを製作し、映画『疑惑の方程式』で使用しました。
  その時はたった1chのトラッキングのみでしたが、必要なら制御軸を増やすのも難しいことではありません。 今回の記事は、その時の製作方法を中心にモーション・コントロール・キャメラの原理と制作方法を紹介しようと思います。

『疑惑の方程式』 撮影ビハインド



モーション・コントロール・キャメラとは

  その名のとおり、コンピューター制御でキャメラの動きを制御するシステムです。
  では、なぜわざわざコンピューターで制御しなければいけないのか? これには、幾つかの異なった理由があります。


その1 : 合成素材のキャメラワークを揃えるため

  基本的にSFX映画における合成とは、複数の素材を合成して1つのカットに仕上げる技術です。 その場合、素材の1つは必ず背景を含んでいるはずです。 さて、ここで新めて考えてみましょう。 背景とはどんなものでしょうか? 背景素材にはそのカットの存在する『環境』が映っています。 しかし、映っているのはそれだけではありません。 その空間でのキャメラの位置と移動のベクトル、そしてレンズの焦点と焦点距離のすべてが表現されているのです。 動かない背景だと、この時キャメラは静止しているのだろうと分かります。 背景が横に流れていればドリーによる移動ショットだと分かるし、その時、前景と後景がズレなければパンだと分かります。
  そう。 背景素材にはキャメラワークが記録されているわけです。
  この背景に、被写体を合成するとしましょう。 被写体と背景のパンの速度やドリーやズームの速度を揃えないと、ギクシャクした画面になってしまうのが想像できるでしょう。  お姫さまの手の上(背景)の一寸法師(被写体)が、キャメラがパンするたびに手から外れたり、浮いたり、めり込んだりしてはいけないわけです。 合成は、あたかもそこに存在するように合成しなければいけません。 そのためには、背景素材を撮影する段階で、モーション・コントロールでキャメラワークを制御したり、フィールドレコーダーと言う機械でキャメラワークを記録したりして、合成素材どうしのキャメラワークを揃え、各素材の絶対座標を統一することで、あたかもそこにあるように合成することが出来るのです。 近年ではコンピューター技術により、撮影済みのフィルムからキャメラワークを割り出すシステムもあります。 CGIをはめるならそのもままで良いが、ミニチュアや人物などの実景を合成する場合は、コンピューターが割り出したキャメラワークを元にプログラムして、モーションコントロールで撮影する必要があるのです。


その2 : ミニチュアをリアルに撮影するため

  ミニチュアをリアルに撮影するには次の2つの点に気をつけなければいけません。

その1 : パンフォーカス

 例えば港に行って、全長200mのホンモノの船を前から撮るとしましょう。 船全体をフレームに納めようとすると、多分キャメラから船の舳先までの距離が30〜50m位になるでしょう。 船の最後尾は250mくらです。 と、言うことは、ピント合わせは、船の舳先で既に無限遠になっているわけです。 すると舳先より遠い船体は、尻尾までずっとピントが合っている計算になります。 そう。 巨大な被写体は、手前から奥までピントが合うのです。 逆に言うと、ミニチュアを撮影する時でも、手前から奥までずっとピントが合っていないと巨大には見えないのです。 船の舳先だけにピントが合っていて、途中からピントがぼけると、いかにも「小さなミニチュアの接写」という感じになってしまうのです。
  それを防ぐために、広角レンズや絞り込みで被写界深度を稼ぐのがミニチュア特撮の常套手段なのです。


その2 : 照明

  良く晴れた日に電信柱の影を見てみましょう。
  一本のシャープな影が真っ直ぐ伸びていると思います。
  では、机に爪楊枝を立てて、それを電信柱のミニチュアだと思って照明を当てると考えてみましょう。 ホンモノの電信柱と同じようなシャープな影を作ろうとすると、キーライトは遠距離に1灯、と、太陽と同じようにするのが理想です。 しかし、先程の被写界深度のことを思い出して下さい。 被写界深度を深くとるためには絞りを絞り込まねばならず、余程大出力の照明でなければ遠距離に1灯とはいきません。 かと言って近距離から当てると照明の口径のため、影がぼやけるし、照明むらを起こすので、今度は複数の照明を必要とし、ぼやけた複数の影が出来てしまいます。
  ミニチュア撮影では、リアルな照明を求めて、屋外で撮影するコトもしばしばあります。 ホンモノの太陽で撮るのが一番ホンモノらしい照明になるからです。
  ミニチュア撮影は、商品撮影など被写体をキレイに撮るための照明とは考え方が根本から違い、キレイに見せることより、ホンモノらしく見せることを優先します。 富士山を撮影するのにレフ板を当てる人はいないでしょう? つまり、意図的な照明が届かない巨大物を模倣するためには、必ずしも美しい照明を当てて良いとは限らないのです。

  映画『さよならジュピター』の木星ミネルバ基地のカットを見て下さい。 キレイに当てられた照明のための余所余所しさと、被写界深度の浅さのため、巨大感はあまり感じられないと思います。
  一方『2010年宇宙の旅』のレオノフ号は、パンフォーカスとシャープな影が創り出す巨大感に目をみはるものがあります。

  要はそういう事です。


  さて、被写界深度を深くするためり絞り込みと、シャープな影を作るための遠方からの照明を両立しようとすると、決定的に光量が不足します。
  これを解決する方法は二つしかありません。
  一つは高感度フィルム。 しかし、これは著しく画質が落ちるのと、8mmの場合には感度が200以上のフィルムが存在しない事から現実的ではありません。
  そこでもう一つの方法、長時間露光。
  シャッターの開放時間を長くして露光量を増やすのです。 スティル写真では一般的な方法です。 ところが。ムービーの場合は写真のように簡単にはスローシャッターが使えません。 なぜなら、ムービーは動くのでです。 1秒当たり24フレーム、8mmの場合は1秒当たり18フレームを撮影しなければ、動きがおかしくなってしまいます。 もしシャッタースピードを半分にするとなると、キャメラワークも、被写体も、全てが2倍のスローで動きながら撮影しなければいけないのです。 光量を2段稼ぎたい時は4倍のスローで、3段稼ぎたい時は8倍のスローで動かねばなりません。 人間では到底ムリな撮影です。
  そこで、コンピューター制御でキャメラとミニチュアをゆっくり動かしながらフィルムをゆっくり回そうと言うのが、『スターウォーズ』の時にジョン・ダイクストラが発明した、モーション・コントロール・キャメラ『ダイクストラ・フレックス』です。 あれは合成のためのキャメラだと解説している書籍も多数ありますが、本来の使い方としては、被写界深度を稼ぐのも重要な役目でした。(巨大宇宙船の壁面をパンフォーカスで撮るために、ビューカメラのようにアオリの出来るレンズも作られていた)

  『スターウォーズ』のモーション・コントロール・キャメラ以前に、同じ原理を用いた撮影がなかったわけではありません。 『2001年宇宙の旅』のディスカバリー号の撮影です。 全長15mの巨大なミニチュアを使ってでさえ、それを接写するには当時のレンズの性能では被写界深度が撮れず、電動モーターでレールの上をゆっくりと走るドリーと微速度モーターを付けたキャメラで長時間露光を行う事で、あの被写界深度の深い飛行シーンを撮影したのです。 『2001年宇宙の旅』の宇宙船は皆、ただ一直線に飛べばよいだけだったので、複雑な制御は必要とされませんでした。ただの微速度撮影装置でよかったのです。 しかし、『スターウォーズ』のように無数の空中戦カットを必要とする映画では、プログラム次第でどんな動きでも再現できるコンピューター制御のキャメラが必要になったのです。 そこでモーション・コントロール・キャメラが誕生しました。
  モーション・コントロール・キャメラは、最初は『ダイクストラ・フレックス』のようなステッピングモーターを使った長時間露光用の物が主流でした。 しかし、ステッピングモーターでは移動速度が遅いため、普通のライブアクションにはキャメラワークが対応しきれません。 SFX映画の合成素材は宇宙船ばかりではないのです。 そこでライブアクションでの合成素材をリアルタイム撮影が出来るよう、高速移動の出来るサーボモーターを使った物が開発されるようになりました。 今ではそう言った高速モーション・コントロール・キャメラがビデオ撮影などでも使用され、バーチャルスタジオなどで勝つようされています。



モーション・コントロール・キャメラの製作方法

  自主映画でミニチュア特撮を行う場合、商業映画のような巨大なミニチュアとセットを作るのは大変です。 そこで、小さなミニチュアセットでも被写界深度を稼げるモーション・コントロール・キャメラが欲しいことがあります。 そこで、個人でも出来るモーション・コントロール・キャメラの製作方法を簡単に解説しましょう。


コントロール可能なキャメラ

  8mmキャメラZC1000や、16mmキャメラボレックスRX−4以降には、1回転まわすと1コマ撮影の出来る回転軸が用意されています。
  ZC1000の場合はストロボのシンクロ用、ボレックスの場合は1コマ撮りモーターを取り付けるためです。
  ZC1000の場合、別売りのフィルミング・クランクを買ってその軸に取り付けると、手回しで撮影が出来ます。 クランクが上位置でシャッター閉、半分まわしてクランク下位置でシャッター開。 これでバルブ撮影が出来るわけです。 もしそのクランクを1秒に18回ぐるぐると回せる根性があるなら、電池なしで撮影ができます。

 この回転軸に制御可能なモーターを取り付ければ、フィルムの露光と走行をコントロールできるわけです。

  ボレックスのRX−3以前でも、1回転で8フレーム進む電動モーター取り付け軸ならあります。1フレーム単位の作業には精度的につらいですが、ミニチュアの被写界深度を稼ぐだけなら充分に使えます。
  他にも、アリフレックス等、モーターの交換が可能だったり、オプションで1コマ撮り用モーターを取り付けられるタイプのキャメラなら、無改造で使用が可能です。


ステッピングモーター

  別名『パルスモーター』または『ステッパー』。
  これは、手軽に回転を制御できるモーターです。 工業用ロボットアームにはもちろん、FAXの紙送り、プリンターの印字ヘッド、カメラのオートフォーカス、コピー機やスキャナーのセンサー移動、クォーツ時計の針、等々など、「リュリ―――〜〜〜リリュ」とか、「カカッ、カカッ、カカッ、カカッ……」と特長的な音のするモーターは大概、ステッピングモーターです。
  例えば『200パルス』と言うステッピングモーターがあるとします。 これは「200回パルスを送ると1回転するモーター」と言う意味です。(『1パルス』と言うのは『スイッチを一回入れて、切る』コト) その比率は常に200パルスで360度。 1パルスだけ入れると、1.8度だけ回転します。 100回パルスを送ると180度だけ回転します。 パルスを入れないと静止したまま。 しかも『静止トルク』と言って、止まったままブレーキがかかったようになります。(電源を切ったプリンターのヘッドは、手で動かせば動くが、電源を入れると固くて動かなくなるのは、この静止トルクのため) パルスを素早く送り続けると早く回り、遅く送り続けると遅く回ります。 逆回転用のパルスを送ると、逆回転もできます。 正しい使い方をしている限り、絶対狂いません。 だから、他の種類のモーターと違って、回転センサーを必要としません。 そのため、安く簡単な構造で機械を制御できるのです。 それがステッピングモーターです。
  ただし。
  このモーターは、普通のモーターと違って、モーターだけでは回転しません。 『駆動回路(別名ドライブ・ユニット)』と言う、「パルスを入れるとモーターを回す」回路が必要です。 ステッピングモーターには、かならず駆動回路と繋いでやらなければいけません。 この駆動回路にコンピューターなり何なりからパルスを送ってやれば、モーターを意のままに操れるわけです。 なんなら、駆動回路に直接スイッチを付けて、指でスイッチを連打しただけでも、押しただけ正確に回ります。

ZC1000 + ステッピングモーター


ZC1000にステッピングモーターを取り付けた所


駆動回路(ドライブ・ユニット)

  予算かけても構わないなら、メーカー製のドライブ・ユニットを買うのが一番早いのですが、安く済ませたいなら、秋葉原で言う秋月電子とかのジャンク屋に行くと、小型のステッピングモーター(ジャンク品)と一緒に、ステッピングモーター駆動回路のキットみたいな物を売っているので、それを買ってくるのが安く簡単です。 これでも充分安いのですが、小型の物なら自作するともっと安くなります。

  駆動回路は、I/Oから4bitもらって、そこにパワートランジスターを1つづつ(計4つ)付けるだけでも機能します。 コンピューターが直接モーターの各相の励磁タイミングをとっても構わないわけです。 特に、こうしなければイケナイと言うコトはあまりないので、手元にある条件と目的に合わせて臨機応変に工夫しましょう。

  もっと詳しい事が知りたいと思ったらステッピングモーターの参考書を買うとよいでしょう。 ステッピングモーターを使った設計を行う技術参考書はたくさん出版されているし(その一冊の中でも、本当に必要な知識はごく一部だ)、オリエンタルモーターのモーター総合カタログを読んだだけでも、必要な知識は一通り書いてあります。


コンピューター

  正直、自分が使いやすいモノなら何でも構いません。 なぜなら、高度な処理能力は必要ないからです。 私は当時、MSX2と言う家庭用8bitコンピューターを使っていました。 商業映画で、造形物をコンピューターで制御する仕事をした事もありますが、それもMSX2で充分でした。 この程度の機械なら、制御は非常に軽いのです。
  『スターウォーズ』で使われたモーション・コントロール・キャメラ『ダイクストラ・フレックス』や、『ドラゴンスレイヤー』の時のゴーモーションシステムも、全部、アップル2で動いていた事を考えれば、ホストマシンはMSX2でも充分です。 アップル2は、その当時としては先端のマシンでしたが、内容はと言うと旧ファミコンと同じCPUでメモリーも最大で64K程度と、現代のマシンから比べるとかなり貧弱です。 MSX2コンピューターですらスペック的にはオツリが来きます。

MSX2コンピューター


MSX2コンピューターの例。

上に乗っている基盤は、インターフェィスと、ステッピングモーターのドライバーの学習用キットである。

  埃だらけの撮影現場にガチャガチャとセットする事考えれば家庭用の乗りがかえって安心で、キーボードとワンピースの本体はカバンに詰めて運べるし、壊れても、時間のかかる修理より買い換える事の出来る値段(その当時の普通のマシンとMSX2の値段の差はかなり大きかった)、乱暴な扱いにも耐える3.5インチフロッピー(当時のマシンは皆5インチだった)、現場に転がってる家庭用テレビを使えるので、RGBモニターを運ぶ手間もいりません。

  参考までに、以前、MSX2で制御した造形物を紹介しましょう。
  映画『仮面ライダーZO』に登場するネオ生命体と呼ばれるクリーチャーです。(造型:高柳祐介氏) これは、コンピューターにシナリオを打ち込んでおくと、口の形をセリフの通りに再現するモノです。 MSX2のような旧型機でも、簡単な機械なら、充分に制御可能であるという例です。 マシンそのものに拘る必要はありません。

ネオ生命体ネオ生命体:頭部メカネオ生命体:頭部メカ


ネオ生命体の造形と、その頭部のメカ。 サイズも小さく、中はシンプル。

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唇を、セリフの母音の形に素早く切り替えるリップアクションメカ。

  今だと、ホストマシンは中古の液晶ラップトップとかでも良いかもしれません。 CRTモニターのいらない身軽さと、AC電源がなくてもDCで動くからバッテリーでも対応できるし、開発用アプリケーションが豊富にあります。 周辺機器も豊富。 どんな高価なマシンを使って手間をかけても、それはフィルムには映らないので、ムダになります。 手元にあるモノを利用しよう。


インターフェィス

  これは、使用するコンピューターによって仕様が変わります。 要は駆動回路にパルスを送ってやればいいだけなので、数ビット分のパラレルI/Oポートがあれば充分。昔のNEC製98シリーズなどは、制御用インターフェィスボードが様々なメーカーから各種販売されていました。 その他の機種でも、「トランジスター技術」などの専門誌の広告を探せば、必要な回路はすぐ見付かります。

  いまさらMSXでもないと思いますが、参考までに、私が昔よく使っていたシステムを紹介しておきます。
  MSXから駆動回路へのインターフェースは、

  〒770 徳島市 庄町 1丁目 63番地
    有限会社 エミールソフト開発
        TEL 0886−31−2366

  の、「MSX用 パラレルI/Oインターフェース」を使っています。
  これは、ROMカセット状の本体に、8255と言うパラレルI/O−ICが2個入っていて、8bitポート×4と、4bitポート×4、計48bitの入出力が出来ます。
  I/Oインターフェースと駆動回路のGND(マイナス)同士を繋いで、I/Oからの信号線を駆動回路のパルス入力に繋ぎます。 これをROMカセットと同じようにMSX本体に挿せば終わりです。


プログラム

  私の場合は、速度の必要なドライブ用ルーチンのみマシン語でプログラムして、BASICのメインルーチンから呼び出しをかけました。 メインルーチンは各種数値設定等の計算と、トータルコントロールを受け持ちます。 BASIC製なのは、撮影現場で必要に迫られた時に、とっさにプログラムの仕様変更が出来るので大変便利だからです。 しかも暴走もしない。 何にしても現場で対応しやすい事が総合的な信頼性に繋がります。
  ドライブルーチンの内容は、というと。 決められた時間ごとにパルスを送るだけです。 メインルーチンからもらったパラメーターを基準に、駆動回路に繋いだbitをOUT命令で上げたり下げたりしているだけです。
  昨今のハイパフォーマンスのコンピューターなら、BASICで直に制御しても速度的には問題ないでしょう。  富士通ミドルウエア製、「F−BASIC」などを使うと、昔ながらのMSXやN88と同じ逐次処理型の記述でプログラム可能な上、コンパイラーなので処理速度もかなり高速です。


キャメラムーバー & モデルムーバー

  キャメラやミニチュアを動かす装置です。 これが工作の肝です。 が、難しく考える事はありません。 私が作った時は、直線移動しか必要なかっので、ドリーが1つあればそれで済みました。 ちょうど手元に、その昔、「小型映画」誌に作り方の載っていたミニドリーがあったので(先輩の誰かが作ったのであろう)それを流用しました。 と言っても、簡単なウィンチを作り、それにステッピングモーターを取り付け、台車をワイヤーで引っ張るだけです。 

キャメラムーバー

  もしパンやティルトなどのキャメラワークが必要だと考えるなら、雲台の変わりに天体望遠鏡を乗せる微動装置を買ってきて、その操作ノブにステッピングモーターを取り付ければ終わりです。 キャメラムーバーとしてかなり上等なモノになるはずです。

  モデルムーバーはそれの応用です。 ミニチュアを乗せる支柱をステッピングモーターで動くようにすれば終わりです。 これは、撮影に必要な動きができるように、カットごとに作りなおしても構わないでしょう。 ミニチュアに直接モーターを仕込んだりしても良いでしょう。



モーション・コントロール・キャメラによる撮影

  キャメラに設定されていない長時間露光を行うので、キャメラ内蔵の露出計が使えません。 ちゃんと単体露出計で露出を計り、そこで割り出されたシャッタースピードに応じてコンピューターにプログラムしましょう。 その時、注意しなければいけないのは、キャメラのシャッター開角度です。 例えばZC1000ならばシャッター開角を全開にした時、開角度は180度なので、180/360=1/2 となります。 つまり、1秒の露出時間が欲しい時は、1フレームを2秒かけて回すようにプログラムしなければいけません。

  そして、フィルムの種類に応じた相反則不軌の補正も必要です。
  実は当時私は、相反則不軌なんてことを知らなくて、1フレームに1分以上かけて露光して大失敗したりしてました。
  ご存知の通り、フィルムには相反則と言って、絞りとシャッタースピード(光量と露光時間)が反比例の関係にあると言う規則があります。 絞りを1段絞って光量を1/2にする時は、シャッタースピードを1段下げて露光時間を2倍にすれば釣り合いがとれる、というアレです。 フィルムと言うのは銀塩からなる化合物が、光エネルギーを浴びて化学反応を起こすことで画像を記録するものです。 浴びた光の量によって化学反応を起こす度合いが変わり、その度合いがフィルム濃度となって現れるのです。 その光の量と言うのは、『光の強さ×露光時間』で表されるワケなのですが……フィルムに当たる光があまりに弱いと、この関係が狂いはじめるのです。 光が弱すぎると化学反応がにぶってしまい、計算通りの化学反応が起こせなくなるのです。 フィルムのラチシュードで『足』と呼ばれる低照度部の特性が、その性質のため起こるのです。 長時間露光の必要なほど絞り込む時は、露光時間を余分に取らないと露出不足の画になってしまうのです。 またカラーの場合には、マゼンタ、シアン、イエロー、それぞれの色を受け持つ銀塩によって、この反応の変化がまちまちで、結果、色までも狂ってしまうのです。 これが相反則不軌とよばれる現象です。
  どの程度の狂いが生じるかは、フィルムの種類によってまったく違います。 露光時間30秒でも安定しているフィルムもあれば、露光時間が1秒を超えると1/3絞り分余計に露光してCCフィルターの何々で色を補正するといったフィルムもあります。
  スティル写真をやってる方には常識でしょうが、ムービーではそんな長時間露出を行うことなど希です。 そんな事を学生時代の私が知る由もなく、『疑惑の方程式』でモーション・コントロール撮影を行った時は、画質の良い低感度フィルムが良いだろうと言って、調子に乗ってR25で1分とか2分もの長時間露出を行い、なんでアンダーなんだろう、なんでマゼンダに傾いてるのだろう、と首を傾げていたものです。

『疑惑の方程式』 撮影ビハインド


『疑惑の方程式』 撮影ビハインド

  以上、モーション・コントロール・キャメラの概念と、簡単な製作手順です。 あくまでも基本的な概念なので、これを参考に、必要性と環境に合わせて創意工夫の必要があるでしょう。


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