エリアル・プリンターの制作
個人で作れる光学合成機
(文責:高山カツヒコ)



  自主映画では、限界はあるもののチョット気のきいた合成カットがあったりすると、けっこう豪華になったりするものです。 ここでは、以前私が制作したフィルム合成機、『エリアル・プリンター』の製作方法と簡単な合成のノウハウについて紹介します。 正式名称は、エリアル・イメージ・オプティカル・プリンター。 直訳すると『空中像光学合成機』と言った所でしょうか。
  『エリアル・プリンター』は、8mm、16mmを問わず、古くから自主映画制作者達の間で『夢の光学合成機』として知られています。 そして、映像表現の可能性を広げようと、その製作を試みた先人達の数々の記録があります。 もともとは、その昔16mm映画でトラベリング・マットが使えなかった時代に多用していた機械ですが、それは自主映画の環境にも当てはまります。
  『エリアル・プリンター』は、コマ抜きによる早回し、コマ増しによるスローモーション、静止画像によるストップモーション、逆回転、オーバーラップ、ディゾルブ、ワイプ、スーパーインポーズ、スプリットイメージ、スティショナリーマット合成、トラベリングマット合成、色補正など、あらゆる特殊視覚効果を低予算で可能にする、まさしく『夢の光学合成機』です。
  今回の記事は、以前8mm用の『エリアル・プリンター』を製作した時の様子を中心に、その原理と簡単な製作方法を紹介しようと思います。 この記事をごらんの通り、原理と構造が単純なものなので、16mm用に製作したり、ビデオキャメラを取り付けてテレシネ機に応用したり出来ます。



フィルムの合成

エリアル・プリンターとは?

 まず、エリアル・プリンターとは、どんな物かを説明しましょう。
 原理としては大変簡単なもので、現像済みの素材フィルム(ポジ)を映写機にかけ、それをキャメラで撮影することで素材フィルムをデュープ(複写)します。 その複製の過程で直接絵や文字を書き加えたり、多重露光で合成を加えたり、と様々な効果を加えるものです。  特にリバーサルフィルム(ポジ画)を使う8mmではうってつけの合成方法なのです。

  実際に例を上げると、映画『怪獣総進撃』のキングギドラの引力光線などが有名です。 それぞれ別々の方向に動くギドラの首と、その口から吐く引力光線の着弾、そして爆発との絶妙なタイミングは、画像に直接書き込むように合成されたゆえの妙技です。 作業が簡単で、位置やタイミングのずれないエリアル合成は、当時の東宝特撮の光線兵器の効果に多用されたようです。
  当、TEP PROJECTの作品では、まず『異端の森』の時に実験的に使われ、火山の爆発シーンをコマ増ししてスローモーションをかけています。 その後、『地底鋼人マグマテウス』では各種光線技をアニメ合成や透過光合成で表現しており、『目覚めよと呼ぶ声あり』ではレーザー砲の光線や放電効果、ミサイルの噴煙や砲撃などの合成に使用しています。



フィルムの合成方法

  一言に『合成』といっても、大雑把に3つのカテゴリーに分類できます。

インカメラ・プロセス
  カメラ内の、1本のフィルム上で合成が仕上げられる。
    :スプリット・スクリーン
    :マット・ショット
    :グラス・ワーク
    :ミラーショット

ラボラトリー・プロセス
  オリジナル・フィルムから、少なくとも1回以上のデュープ(複写)が必要。
    :バイパック・プリンティング
    :オプティカル・プリンティング
    :トラベリング・マット
    :エリアル・イメージ・プリンティング

コンビネーション・プロセス
  上記の併用によるもの。
    :スクリーン・プロセス

(R .FIELDING著 THE TECHNIQUE OF SPECIAL EFFECTS CINEMATOGRAPHY より)


  8mm映画で行う合成と言えば、そのほとんどがキャメラ一台でできる『インカメラ・プロセス』か、映写機との併用でできる『コンビネーション・プロセス』によるもので、それというのも『ラボラトリー・プロセス』を行う機材が不自由な事に起因します。
  『インカメラ・プロセス』は、デュープ(複写)を行わないので画質の低下はありませんが、素材の撮影段階で合成を行いますので失敗時のリスクが高く、また、素材自体の善し悪しも現像が上がるまで確認ができないのが難点です。
  エリアル・プリンターは、上記の『ラボラトリー・プロセス』に属します。 つまりデュープ(複写)がこの合成機の基本になり、現像済みフィルムをデュープすることで、1コマ単位で効果をかけることができ、失敗しても素材フィルムがあるかぎり、リテイクも可能です。



エリアル・イメージ(空中像)とは?

  ちょっと、簡単な実験をしてみましょう。
  まず映写機を用意します。 8mm映写機でもスライドプロジェクターでも構いません。 そして凸レンズ、いわゆる虫眼鏡を一つ。 まず映写機にフィルムを入れ、ズームを絞って望遠よりにしてから、凸レンズに向かって映写してみて下さい。 そして凸レンズの向こうで結んだ焦点の位置からレンズに向かって覗いて見て下さい。(注:光量の強い映写機の場合、目を痛めます。NDフィルターを何枚か重ねて、充分に光量を落として下さい)(図1)

  すると、凸レンズの中に、フィルムの画像が見えると思います。 映写機の電球のフィラメントの形をした光源ムラのある映像が凸レンズの中に浮かび上がります。 これが空中像=エリアル・イメージです。 これをキャメラで再撮影すれば(図2)、デュープ(複写)ができます。  これが、エリアル・プリンターの原理です。 では次に、凸レンズの前に透明セルを置くと、どうなるでしょう。 そう、セルに描いた絵とフィルムの画像を同時に撮影する事で、マット画のように合成されます。 同様に、セルを黒く塗って雄雌マスク作り、雄マスクを置いて再撮したキャメラのフィルムを巻き戻して、雌マスクに置き換えて別の画像を再撮すれば、マスク合成やワイプ、透過光なども出来ます。 文字を書いたセルを置くことで、字幕のスーパーインポーズもできます。手間さえ惜しまなければ他にも、けっこう色々な効果が期待できます。



製作の実際

材料の準備

  制作にあたって主に必要な材料ですが、
   :映写機
   :コンデンサーレンズ(凸レンズ)
   :表面鏡
   :ギヤード・モーター

  後は、スイッチ類と配線材、本体を作る構造材(私は木材を使いました)と言った所です。 本体は余計な反射を防ぐため黒く塗ると良いでしょう。 取り付けるキャメラは、やはり1コマ単位のフレームカウンターのついているものがベストです。 8mmだとフジカZC1000、16mmだとボレックスあたりが適当ですが、手に入らない場合は、最低でもコマ撮りの利く物、多重露光による効果を使いたい場合はフィルムの巻き戻しがきくキャメラが良いでしょう。


コンデンサーレンズについて

  まず、一番問題になるのが、コンデンサーレンズの入手です。 これによって、全体の設計が大きく変わります。 できる限り直径の大きな物を探して下さい。 前述の通りセルやマスクを置く際、大きな絵を描ける方がより緻密な作業ができ、またマスクを使う時のレジストレーションの誤差も小さくなるからです。 照明機やエディター、大判の写真の引き延し機などを分解すると、かなり大きめのレンズが手に入ります。 大型のルーペでも良いでしょう。 PEEK社のデスクルーペには、かなり大きい物もあります。 また、焦点距離も直径にそって考えて下さい。 あまり短いとカメラの最短焦点深度に収まらず絵にピントが合わせられなくなります。 あまり長いと機械が無駄に大きくなり、作業しずらくなり、調整も無駄にシビアになります。 私の場合は、直径約220mm、f1100mmの片凸レンズを2枚重ねて、f550mmとして使っています。 片凸レンズを、凸側を向かい合わせで使用すると、色集差が消える為(図3)、画面周辺の色滲みを押さえられます。

コンデンサーレンズの例


映写機について

フィルムゲートの修正

  次に映写機ですが、プレッシャープレートとアパーチュアのマスク部をヤスリで削り画面を広げます。 上下のフレームが若干見え、左右もパーフォレーション穴とサウンドトラック部が少し映写される位まで広げます。(図4)

(図4)


光源の処理

  光源は、フィラメントの形による光源ムラを消すための散光と、フィルムを停止した時に熱でフィルムが焼けないように減光する必要があります。 これは、ランプとアパーチュアとの間に散光板を入れる事で解決します。ランプの熱で焼けないように、熱に強いテフロン製の白色板を使用します。これは東急ハンズなどで入手可能です。 私の場合は、配管工事でパイプのシーリングに使うテフロンテープを使いました。(図5)

  散光板を入れた状態で図1の実験をやって見ましょう。 今度は光源ムラのない、きれいな映像が見えるでしょう。 もし画面中央と周辺との明るさにムラがあるようでしたら、目(キャメラ)の位置を前後に調整して下さい。 均一になる場所があるはずです。


色温度の調整

 次に、ランプの色温度ですが映写機のプロジェクションランプの場合3000°Kと、タングステンランプより200°Kほど低い(約3デカミレッド高い)ので、ゼラチンフィルター・コダックラッテンの82Bを映写機のレンズ、またはアパーチュアに取り付けます。これで、タングステンフィルムによる再撮でデュープが出来ます。
  しかしタングステンタイプの高感度フィルムRT200より、デイライト用の低感度フィルムを使った方がフィルムの粒状性が良く、画質の劣化を押さえられるので、キャメラ側のレンズにライトバランシングフィルター(例えばケンコーC12)を付けてデイライトフィルムR25を使う方をおすすめします。


映写機のメカニズムの改造

  次は映写機の大改造です。
  映写機を、1コマ送りができる様にします。 これは映写機の種類によって方法が異なるため一概には言えませんが、参考までに私の採った方法を紹介します。
  使用した映写機はエルモFP−100サイレント。 まず映写機のモーターからのVベルトとプーリーを外します。 モーターには冷却ファンの役目があるので生かしたままにします。 次に、コマ送り用のギヤードモーターを取り付けます。 ギヤードモーターはタミヤの遊星ギヤボックスとマブチモーターのセットが簡単に手に入るでしょう。 ギヤードモーターの出力シャフトに先程のプーリーを取り付けます。 そして、Vベルトの長さに合わせてギヤードモーターの取り付け場所を決めます。 私の場合、ちょうど映写機本体の上になりました。ギヤードモーターを回して見ると、1.5秒ぐらいで1コマ回転してくれます。

映写機 エルモ FP−100 サイレント


  さて。 8mm映写機の場合、通常18コマ/秒で映写されますが、18コマ/秒そのままで映写すると、フリッカーが強くて人間の眼には滑らかに見えません。 そこで回転シャッターで1コマを3回刻んで、画像のまたたきを54回/秒まで上げ、滑らかに見えるようにしています。 人間の目は、特に疲れていなければ、最高30〜40回/秒ぐらいのまたたきはフリッカーとして感じるのですが、それを超える速度のまたたきは、残像のため連続して見えるわけです。 その為、映写機には1コマを3回刻むようにシャッター羽が3枚付いています。 映写機をゆっくり回して見て下さい。 フィルムかき落とし爪(クロー)が連動しています。 が、良く観察して下さい。 実際にクローが伸びてフィルムをかき落とすのは、シャッターが光を遮る3回に1回だけです。 この、フィルムをかき落とす瞬間に光を遮っている羽以外の2枚を根元から切り落とします。(図6)  さあ、フィルムを入れて映写してみましょう。 散光板が入っている為、画像は暗いと思いますが、フィルムが停止しても焼ける事は無いと思います。 ギヤードモーターに電源をつないで回して見て下さい。 シャッターが1回落ちるごとに、画が1コマ送られているはずです。 もし、画が見えている時にフィルムがかき落とされていたら、それは間違った羽を切っています。 羽の取り付け角度を変えてみましょう。

(図6)


配線

  次は、配線です。
  回路図に注意して配線して下さい。(図7)  電源は電池でも、別に用意した物でも構いません。 私の場合は映写機のトランスから6Vを引いてシリコンブリッジで整流して使っています。 電源を入れて見ましょう。 ギヤードモーターが回り始めます。逆転スイッチを切り替えて見ましょう。 ギヤードモーターの回転方向が変わります。 ブレーキスイッチを押すと、回転が止まります。 ブレーキスイッチを押している間でも、コマ送りスイッチを押すと、その間は回転します。 また、連続回転スイッチを入れると、ブレーキスイッチを押しても回転は、止まりません。 うまく動きましたか?  前述の通りに作動しない場合は、配線ミスです。 もう一度チェックして下さい。


仕上げ

  最後に、ブレーキスイッチを映写機に取り付けます。 シャッター羽が回って来た時スイッチを押す様にします。(図8)  光軸を遮っていない位置なら、どこでも構いません。 私の場合は、ギヤードモーターの前あたりで都合が付きました。 羽がブレーキスイッチに引っ掛かる場合は、羽のエッジを削って丸めて(斜線部)下さい。 スムーズにブレーキスイッチのON−OFFが出来るようにして下さい。 電源を入れて見ましょう。 羽がブレーキスイッチを押した所でギヤードモーターが止まります。 コマ送りスイッチを押して、すぐ離して下さい。 1コマ分だけギヤードモーターが回って、止まったと思います。 押した時間が短すぎるとスタートしませんが、長すぎると回転が行き過ぎて2コマ送ってしまいます。 もし回転が止まらなかった場合は、連続回転スイッチが入っていないか確認して下さい。 それでも回転が止まらなかったらギヤードモーターの慣性が大きすぎるのです。 ギヤ比を色々と変えてみるか、電圧を落とすとかして調整して見て下さい。


  これで映写機の改造は、終りです。 順転、逆転、の可能なコマ送り映写機の完成です。 この状態でフロントプロジェクションのコマ撮り用プロジェクターにも使えるでしょう。



全体の組立

  さて、次は本体の制作です。(図9)  まず手に入ったコンデンサーレンズと映写機、主に使うカメラから、光軸の全長を割り出します。 コンデンサーレンズから映写機とカメラの位置が等距離になる様に設置すると、1番短く作れます。 コンデンサーレンズの焦点距離の約4倍と思って下さい。 作業性や全体のコンパクトさに気を付けて各部品の配置と光軸の距離を考えます。
  配置を検討する際、コンデンサーレンズと映写機との間に、表面鏡を奇数枚入れます。 これによって画像の表裏を直します。
  普通の鏡ではガラスの裏側にメッキを施してあるので、斜めから画像を反射させるとガラス表面とメッキ面との2ヶ所で反射を行うので画像が二重にだぶって見えます。 表面鏡はガラスの表面にメッキを施してあるので画像がだぶりません。その反面、傷がつきやすいので取り扱いに注意が必要です。

  次に、コンデンサーレンズとキャメラとの間に、セル画やマスクを置くためのガラス板を配置します。 ガラス板がコンデンサーレンズに近すぎると、セル画に当てた照明がコンデンサーレンズに当たり、レンズの球面反射が画像に影響するので注意しましょう。 私の場合トレース作業が楽なように、ガラス板の高さを床より70mmの机型とし、映写機を左側から投影する形にしました。 こうすると正像で作業を進められるので便利です。 ただ、映写機のピント合わせが楽な距離にまで映写機を本体に近付けたため、コンデンサーレンズからキャメラまでの距離が非常に遠くなってしまいました。 そのままではキャメラの位置が高くなりすぎて作業できないので、表面鏡で光軸を往復させて距離をかせぎ、全体をコンパクトにしました。
  キャメラの取り付けは複写機のアームを流用しましたが別になにを使っても構いません。

  最後に、ガラス板にアニメーション用のタップを張り付けて下さい。 これは、画材店やアニメグッズのお店に置いてあります。
  これで完成です。

この図は概念図です。 実際にはキャメラからの視点で、画が正像になるように各機器を配置してください。



エリアル・プリンターの使用方法


セッティング

  使用にあたって、各機器のセッティングをします。まず使用するキャメラで図10の様なチャート1フィルムを作ります。 これは、この先毎回使うのでフィルム1本分位作っておいて結構です。  また、真っ白な紙を画面いっぱいに、2絞り半以上の露出オーバーで撮影した、チャート2フィルムも用紙しておきます。

(図10)チャート1

ファインダーと同じアスペクト比の長方形を3つ同心で描き、ファインダーを2番目の長方形に『ぴったり』当てて撮影する。

同じ機種どうしでも個体差があるので、必ず、合成機に使うキャメラ1台につき1本ずつ用意する事。


光軸の調整

  まず、全体の光軸を合わせます。
  映写機にチャート1のフィルムを入れて映写します。 その際コンデンサーレンズの上にトレーシングペーパーを置き、ちょうどその中央に線の交差が来るように映写機と表面鏡の位置を調整します。 そして映写機のズームを調節してコンデンサーレンズいっぱいに画が出るサイズにします。 そして、トレーシングペーパーを外し、コンデンサーレンズの上に手か紙をかざして見て下さい。 四角く光のワクが映写されているはずです。その紙をどんどん遠ざけていくと四角がだんだん小さくなり丸い円になります。 円が一番小さくなった所が焦点のです。そこにレンズが来る様にキャメラを取り付けます。

  キャメラを取り付けたら、ファインダーを覗いて画面の明るさが均一になるように、キャメラの位置を上下、前後、左右に調整しながらフレームを決めます。


フレーミングの調整

  次に、画像のフレームサイズと位置を合わせます。
  ファインダーを覗いてチャートを撮影した時と同じ様にフレームを合わせます。
  通常、画面の周囲には、フィルムには写りますが映写時にはトリミングされて写らない安全域があります。 キャメラのファインダーでは、その安全域の内側が表示されていますが、これは個体差があってキャメラごとに微妙にずれています。 そのため、ファインダーで覗いて画像の位置とサイズを調整するための基準が必要になるのです。
  そこで、使用するキャメラで撮影したチャートを映写機に入れて互いを調整することで、素材フィルムとキャメラで複写するフィルムの間でずれが起きないようにするのです。  これにより、素材フィルムと同じ拡大率と同じフレームサイズのデュープができるようになります。


露出の調整

  映写機にチャート2のフィルムを入れて露出を計ります。
  フィルムの種類にもよるのですが、通常、リバーサルフィルムが再現できる範囲は約5絞り分です。 適正露出の2絞り半アンダーの部分が黒になり、適正露出の2絞り半オーバーの部分が白になります。 つまり、真っ白いフィルム(フィルムのベース濃度があるので100%透過ではない)を2絞り半オーバーになるように再撮影すれば、白が白に撮影されるわけです。
  そこで、チャート2のフィルムを映写機に入れ、キャメラ内蔵のTTL露出計で2絞り半オーバーになるように調整し、露出を固定します。もし画像が明るすぎて絞りきれないようでしたら、映写機にNDフィルターを付けて光量を落として下さい。
  これで調整は終りです。
  2絞り半オーバーと言うのはあくまでも標準的な数字で、正確にはフィルムの種類によってラチシュードの幅が違いますので、適切な露出は個々に調べて下さい。


合成作業

  現像済みの素材フィルムを映写機に入れ、映写機を1コマずつ送りながらキャメラで1コマ撮りをすれば、デュープが出来ます。まず、これが基本になります。
  1コマずつ送りながら2コマずつ撮れば2倍のスローに、2コマずつ送りながら1コマずつ撮れば2倍速になります。映写機を逆に送りながら撮れば逆転になるわけですが、レジストレーションがずれるので2コマ逆転−1コマ順転−コマ撮り−2コマ逆転−1コマ順転−コマ撮り−と、繰り返して下さい。
  また、露出を下げながらデュープすればフェード・アウト、クローズから露出を上げながらデュープすればフェード・イン、カメラを巻き戻して両者を重ねて撮ればオーバー・ラップ、フィルム無しの画とオーバーラップすればホワイト・フェードになります。
  ガラス板の上に透明なセル板を置いて、それに絵を描き、照明を当てて撮影すればセル画とフィルムの合成が出来ます。文字を書けばタイトルのスーパーインポーズも可能です。
  絵を描く際、周りの照明を消し、セル板とガラス板との間にトレーシング・ペーパーをはさめばフィルムの画像をトレース出来、ロトスコープとして使用出来ます。
  同様に、マット画や、ステイショナリー・マット、トラベリング・マットの製作も可能です。

  マスク合成を現像所に発注すると、たとえ16mmでも、一度35mmにブローアップしてオプティカルプリンターで作業し、その後、16mmにリダクションという手間をかけますので、それなりの予算が必要になります。
  8mmにおいては、発注もできません。
  しかし、映像表現の上では時として合成画面が必要なこともあり、低予算で製作する自主映画においては、エリアル・プリンターは大変便利な機械と言えます。
  フィルムで自主映画を製作しているチーム(特に特殊撮影を多用されてる方)では、一台作っておくのも良いかと思います。


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 この記事は、川村徹雄(スタジオ・エフェックス)発行の『 INDIVIDUAL SFX Vol.5 』 に掲載された記事に、新たに加筆・訂正を加えたものです。



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