

『拝啓.ビル・モールディン様』
喜屋ホビーのGO氏を介してアーマーモデリング誌掲載用のヴィネットを依頼されたのは97年の夏頃だったと思う。久しくディオラマからは遠ざかっていたし、A級専門誌からのお誘いだったので緊張したものの、タミヤの新生ウィリス・ジープをモチーフにするというテーマに惹かれて、お引き受けした。これを機会に同誌の編集長にもご挨拶することができ、またこの13号には喜屋ホビーコンテスト参加作品として川崎氏のマチルダ、橋本氏の“硫黄島のシャーマン”も掲載され、模型仲間3人揃い踏みとなって皆で喜んだ想い出の本になった。


同誌では編集長が解説記事を書いてくださったが、私の説明不足もあって実はチョット実際と異なる部分もあり、また誌上で紹介されていないディテールもあるので、補足説明文として書いてみたい。同誌では「実戦の記録写真をもとに……」と紹介していただいたが、実はこれ、大戦中の従軍漫画家ビル・モールディンの描いたカットがアイデア・ソースになっている。モールディンの漫画は1978年に大塚康生氏監修のもとに出版されたKKワールドフォトプレス刊『U.S.ミリタリービークル』で紹介されて以来、長きに渡って愛好家に親しまれており、私もジープのヴィネットと聞いて真っ先に選んだ題材だった。ところが驚いたことに、その頃発売されたモデルアートのジープ特集で私が一番やりたかったモールディンのカットを先に作られてしまった!一枚のポンチ絵(古い言い方だなぁ)から受ける印象というのは人それぞれ千差万別で、MA誌のライター氏が作られた作品も私の感覚とはちょっとニュアンスが違っていたのだが、出来た作品の印象が異なってもモトネタが同じでは芸がない。で、二番目に気に入っていたヤツを作ることにした。
“ブラッドンガッツ(熱血将軍)”こと米第3軍・パットン中将のお達しで立てられた手厳しい軍紀違反の罰金を説明する看板を仰ぎ見て、ほとんどの通達に違反した改造のジープ、イデタチで呆然とするGIと、ニヤケ顔したMPの図。タイトル“THE DESTITUTE MOMENT.”は「破産の瞬間」の意。これは、私のオリジナル。


偵察用に改造されたガン・ジープはタミヤの新生ウィリスMB。オードナンスのエッチングパーツとバーリンデンのアクセサリーを使用。助手席側にダッシュマウントで機銃を増設した場合、シートが窮屈なのでクッションを取り払ったらしいので、シートの背もたれをクッションが無い状態に作り直したりしている。このモデルでちょっとばかしユニークなのは、わざわざ買ってきた工作材料はやけに少なく、ほとんど我が家に転がっている映画撮影用品でまかなったことだろうか。まず応急オーバーフェンダーは、照明機材の光漏れ防止やハレーション切りに使うブラック・アルミ。無線機のコードは昔の特撮映画のミニチュアセットで送電線等によく使われていた糸ヒューズ。車体からブラ下がっているフィールドバックのベルトやライフルスカバードをくくりつけているベルトは、撮影中に重宝する、パームセルという耐久性に優れた厚めの紙テープの細切り。後部に増設されたエクストラ・カーゴラックは、骨組みはエバーグリーンのプラ材だが中のネットは照明の軟調効果、光量調節等に使う「紗」と呼ばれるネットである。けっこう、使えるなぁ(^^;)フィギュアは各社のパーツの寄せ集めだが、いちばん気に入ったのはMPのヘッド。これはタミヤのGMCトラックのドライバーで、特に改造せずとも塗装で書き込んでやれば容易にマンガチックなニタリ顔になってくれた。ベースは、こういうちっちゃいもんだし、後々変形・収縮するのがイヤだったので、デコパージュのベース面の、凹凸が欲しいところにエポパテを盛り、硬化前に轍を付けたり草を植えたりして結構簡単にこしらえている。看板はプラ材の組み合わせだが、文字はこの当時私はパソコンを持っていなかったので、友人のカノジョにMacで打ってもらった。
タミヤのウィリスジープは名作中の名作。このクラスの小さなヴィネットの連作なんて、考えただけでも楽しい。



