ベルUH−1Bヒューイ
”ヘヴィーフロッグ”

MRC1:35 製作(1993)/文 宮本 拓



『そりゃないぜ、セニョリータ』

 ベル社の開発したUH−1は、ベトナム戦争中から空挺作戦の主役として知られた多用途万能ヘリである。日本でも自衛隊や報道等で使われているので、特にヘリに詳しくない方でもオタマジャクシのようなシルエットと幅広の2枚ローターが発するド派手な「バタバタバタ!」という飛行音には憶えがあることだろう。米軍ヘリには伝統的にネイティブ・アメリカンの部族名が愛称に使われており、同機も「イロコイ」または「イロコイス」の名前で知られているが、前線の将兵たちは「ヒューイ」と呼んだ。これは、部隊配備初期の段階では型式名称がUH−1ではなく、HU−1だったため、「ワン」をアルファベットの「アイ」と読ませて、ヒューイと呼んだ。
 今でこそ1:35のヘリはあまり珍しくなくなったけれど、10年ほど前は皆無で、ベトナム戦のディオラマにはレベルの古い1:32ヒューイが老体にムチ打ってがんばっていたような状態だった。だからMRCという聞いたこともないメーカーが武装満載のヒューイ、しかも私の好きなB型の発売をアナウンスしたときは大喜びしたもんである。


 ヘリ輸送部隊の護衛用として、ヒューイに各種の武装を搭載したのがいわゆる“ガンシップ”で、“スリックス”と呼ばれる兵員輸送型とチームを組んで運用された。ところがガンシップは通常のヒューイに武装を満載しているので重量過多となって速度が出ず、スリックスに追いつかないという珍事がしばしば発生、パワーアップしたガンシップ専用のUH−1Cも作られたがそれでも不十分で、贅肉をそぎ落としたAH−1“コブラ”シリーズの登場を促した。UH−1をベースとしたガンシップには多くのバリエイションがあり、武装の違いで「ホッグ」「フロッグ」「レザーバック」などと呼称されており、私が作った重武装タイプは「ヘヴィーフロッグ」と呼ばれていた。実のところ米軍では、これほどの重武装では運動性能がガタ落ちなのを嫌ってほとんど使用した実績はなく、おおかたオーストラリア軍で使われたというから、私の米軍仕様ヘヴィーフロッグはフィクション・モデルに近い。ほとんどストレイトに組んでいるが、パーツ分割がとにかくもーバランバランで、クリアパーツもフィットがやや甘く、私の不器用さも手伝って難儀をした。改造としては機首のM5アーマメント・サブシステム増設。球体部分は確かプラレールだかレゴブロックだか何かの働くオジサンのヘルメットを2個張り合わせて、エポパテのチューブを付けたが、後になってMRCが正しいC型でこのタイプも発売してしまった。ちぇっ。サテ、ワタシは元来あまりキットに関してマニアックな視点での文句は言わず、出してくれただけでもアリガタイと思うほうなのだが、今回は“イロコイ・フリーク”として敢えて言わせていただこう。


 このキット、完成してみると苦労したわりにはあんまり似ていない。古来数多の「イロコイス」と名乗るキット同様、ツラガマエが今ひとつなんだコレがまた。胴体パーツ左右分割の影響だろうが、下に向かって一旦ぎゅっと絞られて、かつシモブクレになった当代きっての“悪役ヅラ”が再現されておらず、鉄腕アトムの犬の顔をしたパトカー(そりゃ古すぎだ)みたいな可愛い顔なのがいただけない。既存のキットで“顔”が似ているのは古いモノグラム1:24程度ではなかろうか。タミヤあたりがパンチの効いたモールドで武装フル装備のヒューイを出してくれると幸せな気分になっちゃうんだけどな。