タイガーI 初期型
タミヤMM1:35(旧MM版 ) 製作(2001)/文 宮本 拓



『世界でもっとも有名な戦車』

  AFVモデリングを長くやっているけれども、私自身はタイガーにさほど思い入れはない。今から60年以上も前に、まったく前例もなしに山積する諸問題を解決し、総重量50トンを超える車体に強大な88ミリ砲を搭載したクルマを作った技術陣の苦心には敬服するし、この扱いづらい巨大な機械を懸命に操作して戦い続けた戦車兵たち、ひとつひとつの部品の重さが尋常ではない鋼鉄の塊をなだめすかしつつ、丹念にコンディションを保ち続けた整備兵たちの努力にも“プロフェッショナル”としての矜持を強く感じる。また開戦前に作られた小型軽量の訓練用I号戦車から超重戦車VI号タイガー出現までのあまりにも短い時間に、戦時の緊迫した状況を思い、その存在に歴史的意義さえ感じるが、模型単体として見た場合、私にとってはそう面白みのあるカタチをしていない。これならば、もっとメカニカルかつクラシカルなフォルムを見せてくれる IV号戦車のほうが、模型としては好きだ。
  しかしながら、古今東西のAFVをバライティー豊かなラインナップでコレクションしたいと思えば、タイガーは必ずひとつやふたつは作る……自然な流れとして、いつの間にか手にしているアイテムだ。プラモや戦史にまったく興味のない方々でも、零戦や戦艦大和、ジープなどとならんで「聞いたことのある兵器」、もっとも市民権を得ているAFVであると同時に、スケールモデラーの登竜門的なアイテムだと思う。


  タミヤから「世界で初めて」正確なタイガー戦車が発売されたのは1969年。1:25スケールである。翌年にはこのビッグスケールモデルのエッセンスを盛り込んだ1:35キットがリリースされている。現在の目で見ても精緻なパーツと端正な仕上がりで、当時としてはエポックメーイキング的な逸品だったと思う。このキットが発売された年に生まれた子供たちは、今では立派な企業戦士やエンジニア、父親となって社会の第一線で活躍している。途方もない時間の流れを感じる。1989年の暮、タミヤから完全新金型のタイガーI後期型が発売され、97年には“初代”の正統なリメイク、初期型が登場。長きにわたって親しまれ続けてきた“初代”は、静かに表舞台から去っていった。


  ――今になって、この“初代”が作りたくなった。タミヤのリニューアル版は世界最高といわれる出来映えで、恐らくこれを凌ぐ製品はもう出現することはなく、プラモデル・シーンのトップに君臨し続けるだろう。ならば今こそ“初代”のほうを完成品というカタチでコレクションに加え、長く保存しておきたいという衝動にかられた。私の、いつもの悪いクセ(^^;)
  そんなわけで、今となっては誰も作らないであろう、ほとんどストレイト組みのタミヤ“初代”タイガーI初期型である。自分でもアキレルほど何もしていない。ただキャタピラが輪ゴムでまとめられたまま長く放置されていて変形、使用に耐えぬため、泣く泣くタミヤ・カスタマーサービスに問い合わせたところ、パーツの在庫がまだあるとのことで非常に良心的な対応をしていただき、どうやら純正パーツのみで完成させることが出来た。フィギュアも、キットのパーツのみを使ってポーズを若干変えただけである。
  コレ以外、特に説明したいこともない。写真をご覧になった方々が、「懐かしいなぁ。長い間、本当にご苦労様」とこのキットに声をかけていただければ、それでいい。


 ※ 写真で共演している「キングタイガー・ヘンシェル砲塔型」は、やはりタミヤの旧版で 80年代末期に製作して保存しておいたもの。“二大老虎”の対面だが、我ながら随分 と作風が変わったものだと思う。