T34/85
タミヤMM1:35 製作(1988)/文 宮本 拓



『シュタイナーっ!』

 今はなきサム・ペキンパー監督の『戦争のはらわた』(原題「鉄十字章」)に登場。戦車長が車内から砲の装填部をのぞき込み、直接照準して至近距離からブッ放すと工場の壁にズドンと口径に近い穴が空き、そこからまずは砲身だけがにゅっと突き出て、更には壁全体を崩壊させながら車体が工場内に飛び込んでくる……あれ観たときゃ、ペキンパーって天才だなと思った。『JAWS』で、夜の海中を進むデカイ鮫の、体にこびりついた夜光虫の光でその大きさを見せ、引っ張っている樽でスピードを表現したスピルバーグも、うめーもんだなこりゃあと驚いたが、アレと同じインパクトがあった。ちっとも模型の話じゃないな。
 大戦中のソ連軍戦車は、受験生の味方である。勉強しなきゃ。でも戦車作りてーっ。すぐ出来てそこそこボリュームあるやつないかな……あっ、T34作っちゃお。ホレ出来た。コレだ。実車も驚くほど構成部品が少なかったそうだが、それを反映してプラモもすぐ出来ちゃう。うーむ、実車に忠実だ。あ、違うのかな。


 タミヤのT34シリーズの中でも、T34/76あたりはノリにノッて書かれた実車解説(名文!)の“刷り込み”もあって「祖国を守った鬼戦車」ってなもんで、何だか“イイもん”の雰囲気があるけれど、T34/85になると途端にこれが悪役ヅラで、「元祖・北の脅威、赤い軍団」みたいな感じ。こっちが好き。1:25と同じやつだけど、ボックスアートが怖くてねぇ。迫り来るT34/85に手榴弾で立ち向かうドイツ敗残兵(?)の図。次の瞬間、このヒトビトは幅広のキャタピラで蹂躙されているのではナカローカ。おいっ、そんなこたぁいーからとっとと逃げろよ、ナニやってんだよもー、踏んずけられちゃうぞ!と、箱を見ながら叫ぶ私。タミヤが大昔に発売していたモーターライズ版T34/85は、何となくプラモ黎明期のレベルに似た、ちょっとSFめいた戦車だったし、純スケールの85型はなかなか発売されず、タミヤニュースには木材を削って砲塔を造る改造記事が載っていたりした。87年になってようやく、ナゼか「限定版」として発売され、これはそのとき買って、買ったその日に完成させたもの。宮崎の実家に帰れば話は別だが、現在、都内の私の自宅にある完成品の中で最も古いコレクションのひとつ。とにかく、ナニもしていない。キャタピラもキットのままで、昔懐かしい車体に通した真鍮線で押さえる方法で弛みを表現してある。ヘッドライトだけ、何かのクリアパーツがくっつけてある。塗装は記憶によれば、ミニクーパーを作った後に残ったブリティッシュグリーンの缶スプレーを下地に吹いて、グリーンとブルー系でドライブラシを繰り返したように思う。今見ると独特の風合い。これを作ってから干支が一回り以上になってしまったけれども、現在ではもっと正確なT34/85が各社から発売されている。昔は85型なんてマイナーだったのに、時代は変わったなぁなんて思ってしまう。


※ 写真のバックに使用したパッケージは、撮影の便宜上タミヤ1:25キットのものを使用しました。