Strv.103“S”
アキュリット1:35&タミヤ1:48 製作(2001)/文 宮本 拓



『白夜に君臨する驚異の機械』

  複雑なヨーロッパの社会情勢の中にあって、粛々と永世中立を続け、そして専守防衛を遵守する場合、陸軍が装備すべき主力戦車はどんな形態を成すべきだろうか……1950年代後半、スウェーデン陸軍は戦車部隊の将校たちにアンケートを実施した。その結果をもとに、世界に名高い国内工学技術メーカー3社――機関砲のボフォース、戦闘車両のランズバーグ、乗用車のボルボ――が結集して開発したのが、この通称“S”タンクである。 なんという異様な形態だろう! 砲塔はなく、車体へ頑強に固定されたヴィッカーズ51口径105ミリ砲は、微妙な操作で車体そのものの向きを変えることによって機敏に照準される。特殊な油気圧装置によって車高を自在に変換でき、鋭いクサビ型……ウェッジシェイプの車体デザインは、強烈な核弾頭の爆風に耐える。ディーゼルとガスタービンエンジンを適時使い分ける、近年の自然環境適応型ハイブリット・カーもかくやという動力を備え、乗員はわずか3名。万が一の事態で乗っている人間がたった一人になっても、操縦、砲撃などすべての挙動をまかなえ、戦闘を継続できる……。近年、スウェーデン陸軍が主力戦車としてドイツ製レオパルドを導入するまで、スカンジナビアに君臨していた驚異の機械であった。


  1970年代初頭、北欧にこんな戦車が存在していることを知っていた一般の日本人は、一部の少年たちだけだったに違いない。彼らはタミヤ製のよく走るモーターライズモデルを作り、そのSF映画にでも出てきそうな独特のフォルムに心底惚れ込んだ。「Sタンク」と呼ぶ少年は少なかっただろう。多くの子供たちはこの戦車を「バルカン」と呼んだから。今となっては懐かしいタミヤ1:48ミニタンクシリーズには、実車の名称とは別にキャッチーな愛称(商品名)が付けられており、Sタンクは「バルカン」と名付けられていた。30分もあれば完成し、複雑な配線は一切不要、電池を入れればすぐ走り、お兄さんたちが作っている精密な1:35MMシリーズのテイストを彷彿とさせるディテールやフォルムが楽しめた。


  ――この頃から「Sタンク」の大ファンだった。でもタミヤのミニタンク以外、日本ではどこのメーカーもキットを発売してくれなかった。何となく夢が叶ったのは90年代初頭になってから。海外のガレージキットメーカーが、高価ながらSタンクの1:35レジンキットを発売してくれた時だ。
  私はレジン製Sタンクを都合2個買っている。まずはAEFデザイン社が発売したもの。パーツ構成を見るといかにも作りヅラそうで、散々考えたあげく知人に売却した。その後92年になってアキュリットアーマー社が当時としては最新型のSタンクC型を発売。同社の戦車モデルをいくつか手がけて、ややレジンキットに慣れてきたところだったので、今度こそはと購入……まではよかったが、買ったら買ったで「なぁに、いつでも作れるサ」とほっぽっておいたら、新世紀になってしまった! 模型好きの皆さんとのお話の中で偶然このキットの話題が出て、これを機に完成させることにした。
 C型は従来のB型を細部にまでわたってコマゴマと近代化改修したもので、車体側面にディーゼル燃料を入れたジェリカンを片側9個づつブラ下げてスペースドアーマーの効果を狙ったり、上面にグレネイドランチャーが装備されていたりするのが最大の特徴となっており、アキュリットはそのあたりを精密に再現している。構成は同社スタンダードで、ほぼ一体成形のボディ本体と、強度を考慮してか足回りは重量感のある金属パーツ。これに細部まで再現されたディテールパーツが豊富に付属する。組み立て説明書は大変シンプルで、作る前にじっくり読み込んで工作過程の説明に前後している箇所はないかを確認しておく必要があるが、総じて作りやすく品質も高い。ただ詳しい資料を持っておらず、細部のパーツの接着位置がわからず首をヒネルこともしばしば……。とは言え、このキットで実車の構造を理解した部分も多々あった。例えば普段は折りたたんであるドーザーブレイドはそれ自体が自在に動くのではなく、車体を上下動させて操作するもので、アーム等は実にシンプル。たたんだ場合はアームを取り外して車体の上に載せておくとか、ハッチは4本のステーが後ろに倒れて平行四辺形を描くように開くとか、思った以上にユニークな車両だ。キャタピラは付属のレジン製をうまく巻き付ける自信がなく、以前作ったモデルでは経年変化で収縮して足回りが変形した経験があったので、別売品を使うことにした。AFVクラブから組み立て式キャタピラが発売されているが、私はタミヤのレオパルド2A5のものを部品バラ売りで購入。420円也(^^;)。もっとも苦労したのは塗装で、スウェーデン軍特有の幾何学的迷彩をどうすりゃキレイに塗れるか皆目見当もつかず、仕方なく各色をいちいちマスキングしつつ地道に塗っていったのだが、塗り上がってみるとどーも殊の外カッコ悪く(ワタシのセンスが悪かったのヨ)ややキツめのウェザリングで落としてしまった。ちょっと絵画的表現になりすぎちゃったかな(^^;) 


  写真で共演しているのは高校時代に買った懐かしいタミヤ1:48ミニタンクシリーズの「バルカン」。Strv.103のA型……それもかなり初期の車体をモデライズしてあるようで、私は好みでB型に改造した。といっても、少ない実車写真や図面を見ながら、現物合わせで各種プラ材、正体不明の余り物エッチングパーツを貼り付けたダケ。でも、塗装してみるとなんとも味があって、お気に入り。


  ところで……久々に箱を開けてみると、キャタピラが無い! 首をひねりつつ考え込んでいたら、ある記憶に辿り着いて思わず声を上げてしまった。キット付属のゴムキャタピラは、高校の頃作った自主映画用のミニチュアに流用したんだった(^^;)仕方なく、アカデミーのリモコン戦車のキャタピラを切りつめて使用。単三電池2本を入れると、金属ギア特有の「シャラシャラシャラ」という懐かしい音をたてながら、とっ散らかった机の上をケナゲに走破する。可愛くてしかたがない。
  いいなぁ、Sは。やっぱやるならSだよ、Mより(違うだろ)。