
『今週のビックリどっきりメカ、発進!』
久々に所謂「喜屋コン」に出品しようとは思ったものの、なかなかアイテムが決まらず困った年だった。結局、かなり奇をてらってM32装甲回収車両に地雷処理用ローラー(マインローラー)を装着したものを選んだ。


コンセプトは「カタチの面白さ」。往年のレベル1:40シザーズブリッジ(M48パットン戦車をベースとした戦闘架橋車両)やレンウォール1:32・28センチ原子砲トラックのような「実物の知名度にこだわらず、模型として見た場合のカタチの面白さを前面に押し出したユニークなモデル」を目指した。“戦場を闊歩する特殊車両”という不気味なイメージの再現である。
しかし……アテにならない記憶を頼りにPANZERや戦車マガジンをかたっぱしから読んでみたが、どうしたわけかコレの写真一枚見つからない。資料探しで徹夜になり、考えすぎて知恵熱でも出たのか、風邪をひいて寝込んでしまう始末。もー〆切まで日がないのにナニをやっとるんだ、オレ。


七転八倒のあげく、ようやく発見したのがコンコード出版「SHERMAN AT WAR」。冬のヨーロッパ戦線で使われているM32マインローラーの写真が2枚だけ載っている。が、写真のマインローラーはT−1E1。バーリンデンからレジンキットとして発売されているのはディスク部分の大きなT−1E3。こちらのほうはノーマルなシャーマンに装着された写真は載っているがM32への装着例は無い。まぁ、シャーマン系列の車体のオプションとして開発されたモノだから、どれでもくっつくハズだと(ホントか !?)割り切って製作に踏み切ることにした。
てなワケで、考証的には完璧と言いがたい車両である。このようなシロモノで難関のコンテストに挑むというのだから我ながらいい度胸。またそれ以上に、このようなマイナーかつ妙ちきりんなアイテムに賞を授けてくださった土井氏をはじめとする審査員の方々の、人間味溢れる審査には心から感謝の言葉を申し上げたい。
ちなみに、当初このM32もディオラマとして完成させる予定だっが時間的に難しいことはもとより、実際作ってみると全長がヤケに長いモデルとなってしまい、コンテストのディオラマ規定サイズに納まらないことが判明して泣く泣く断念した。参考までにこの時考えていたディオラマのプランを記すと、市街地に停車したM32の傍らを、キリコの抽象画に出てきそうな“ワッカを棒で転がして遊ぶ少女”が走り抜けていく、というもの。マインローラーの巨大なディスクをシャーマンの車体で押していくM32の姿と、ワッカを転がす少女のシルエットをダブらせ、ちょっとシュールな作風でまとめようという魂胆だった。
イタレリのM32はM4A1の中でも後期型の車体を使ったものとなっているが、私は実車写真でイタレリと同じ形態のものを見たコトがない。大抵はドライバー/機銃手ハッチの小さな前期型車体を使用している。しかもイタレリのインストに掲載されている写真もキットとは違う前期型車体M32なのである! 私の勉強不足もあろうが、こうなると後期型車体M32の存在というのがいささか怪しいものに思えてしまい、ちょっと奮発してドラゴンの前期型M4A1を使った。あ、ちゃんと資料を探せばイタレリと同じ車体も出てくるかも知れないから誤解しないでネ。キャタピラはタミヤM4のベルト式。本当は同社M4A3に入っているダックビル付きにしたかったのだが、マインローラーを付けるとハマラなそうなので止めた。よくは知らんが本当はハマルんじゃないのかね。こうして仕上がったドラゴンの車体にイタレリのM32用特装パーツを現物合わせで取り付けた。問題はA型クレーンのワイヤーロープの取り回しで、精密感をアップさせるためぜひともワイヤーロープをくねくねと這わせてやりたいところなのだが、いかんせん資料が手元に無く、最低限のロープ張りに止めておいた。ちょっと寂しいかな。
バーリンデンのマインローラーはパーツの整形も綺麗だし、インストも大手メーカーのインジェクションキットばりに丁寧さなので簡単に作れそうに思えるものの、巨大なディスクのパーツ10枚が微妙に変形しているのには閉口した。これは熱湯をぶっかけて厚板に押しつけ、矯正してやる他なかった。これさえ気をつければ結構すんなり完成するし、うまく作ればディスクの上下と回転のギミックも楽しめるようだ。


そんなこんなで完成。思ったよりボリュームのあるシルエットが机上にどどんと出現する……が、なんだいコリャ、どーも、もうちっとばかしカッコいいものと思っていたが、これでは「タイムボカン」か何かに出てきた“今週のびっくりドッキリメカ”のようである。しばし、ひとり爆笑。作った本人が腹ぁ抱えて笑っていても仕方がないので真顔に戻って仕上げに取りかかる。ここまでの組み立て作業は締切に追われているような(実際そうなのだが)危機感で、久々に模型づくりで徹夜になってしまった。正味4日の作業。もうコンテスト締切までは2日しかなかったが、エアブラシの調子が底抜けに悪くて使用に耐えない。最後の手段とばかり、なじみの模型店に頼み込んで店長愛用のエアブラシを借りてようやく塗装にこぎつけた。フィギュアやアクセサリーを配してナントカ完成、まだ塗料の匂いがぷんぷんする完成品を持って、喜屋へと向かったのであった。その後は翌日の午後まで爆睡したのは言うまでもない。
その後開催されたコンテストの受賞パーティーでは、審査委員長の土井氏から「カタチの面白さもさることながら、塗装やアクセサリー、フィギュアによる使い古されたかのような実在感が素晴らしい」と評価され、ちょっと面映ゆい気分だったが、他の参加者の方々の作品は目を見張るような素晴らしさで、私の受賞がほとんど奇跡的だったということを実感した。今回かなり変化球投手で挑戦したが、次回あのような腕前の方々にまたまた変化球で対抗するには、もはやモーターライズで走る恐竜戦車でも出品する他ないのではないかと、ボーゼンと考える私であった。とりあえず、前述したディオラマの幻の企画を実現させてみようかと思っている。

