Mk.IVランドシップ"Male"
エマー1:35 製作(1997)/文 宮本 拓



『教科書に堂々と載る唯一のタンク』

  第一次大戦末期、突如西部戦線に姿を現して独逸軍将兵を恐怖のどん底に叩き込んだランドシップ(陸上戦艦)こと菱形戦車の後期型である。
敵味方がわずか数百メートル離れて対峙、泥濘の中で延々と塹壕を掘り、おびただしい戦死者の死体を踏んで突撃を繰り返しては再び目を覆わんばかりの人的損害を出し、また睨み合う……聞いただけで、夕方の堤防でオカリナを吹きたくなるほど憂鬱になる“塹壕戦”が、この機械の出現でにわかに変化し始め、戦争のやり方は幸か不幸か第二次大戦の“機動戦”へと変貌していった。進化なのか退化なのか。西部戦線に異状あり、である。
  菱形タンクは武装によって、火砲搭載型がメイル(雄)機関銃搭載型がフィメイル(雌)と呼ばれ、両方を混載した両性具有(なんかヘヴィーだな、漢字で書くと)も存在した。専門図書でなくても、歴史の教科書にすら「大昔のタンク」と言えばコレの絵が描いてあるという超有名なメカだけども、プラモの世界では長らくエアフィックスの1:76が唯一の存在で、他にスケール・リンクの高価なメタルモデルくらいしかなかった。エマーが登場したのは90年代に入ってからである。古今東西を問わず、様々なミリタリーモデルをコレクションしたいと画策している私にとっては、同社の躍進によってようやくミッシングリンクが解消されたようだ。あっ、そう言えば中学生の頃、コレのペーパークラフト作ったなぁ。


  キットの出来は……古いエッシーのようなテイストというのか、やや厚ぼったいパーツと、場所によっては数ミリのスキマが出来たり、パーツ同士の接合面が思いっきり表面にどびゃびゃと出てしまい、それをパテ埋めしてペーパーをかけると周辺のリベットが消えて再生せにゃならんといった苦労も多少はあったものの、イキオイに乗って何も気づかぬふりをして作っていればそのうち完成するから私は文句は言わないのである。とにかく私は、教科書に載っていたランドシップが欲しかったノダ! ただ、ベルト式のキャタピラくらいは何とか実感を出してやりたいと思い、考えあぐねたあげくハサミでチョキチョキ切り離して一枚づつ車体に貼り付けてみたが、まぁ、こんなもんなんでしょうかねぇ。惜しいのはハッチがすべて閉状態でモールドされていることで、別パーツならば開いた状態にして表情に変化が出たのにと思う。塗装は、後期のMk.IVあたりだと迷彩が一般的なようだが、私は単一色の重厚なやつが作りたかったので、フィクション性が強いが茶系のODで仕上げてある。ニックネームの“MOBYDICK(白鯨)”も私のオリジナルなので資料的価値は無い。実車写真で見かけた泥濘地脱出用の木材を割り箸(!)で作って載せたりして雰囲気を出してみたが、完成するとキングタイガーと同程度のボリュームがあり、コレクションの中でも異彩を放つ。同時期のホィペットやA7V、ルノーFT等と並べてみたくなるヨ。