GMC CCKW-353 2・1/2
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イーガービーバー"
タミヤMM1:35 製作(1998)/文 宮本 拓
1998年喜屋ホビー戦車模型コンテスト・銅賞作品



『幌馬車で開拓、トラックで戦勝国』

  第二次大戦中、アメリカの自動車メーカーのビッグネーム4社によって合計80万台以上が生産され、戦後も長らく使われた軍用トラックの代表格である。連合軍最高司令官アイゼンハウワーをして「ジープとダコタ輸送機とDeuce and a haifが無ければ、我々は戦争に勝てなかった」と言わしめた、現代戦の影の主役である。オフロードで2・1/2トン、オンロードでは無茶すりゃ5トン近く積載でき、兵員や物資、時には分解した観測用飛行機まで載せてどんな道でもコンボイを組んでトットコ走っていく姿から“イーガービーバー(働き者のビーバー)”または2・1/2トンを表す英語の“Deuce and a haif”と主要生産メーカーであるGMCをカケて“ジミー”と呼ばれて親しまれた。


  映画『プライベート・ライアン』のトム・ハンクス扮するミラー大尉が上官に報告するシーンで、字幕では「戦車とトラックが破壊され……云々」が、よく聞くと「Sherman」に続いて「Deuce and a haif……」と発音しているのに、不思議なリアリティーを感じた。て
  過去の“喜屋コン”では、調子に乗って奇をてらった作品ばかり出品していたので、98年はネタに困った年だった。いろいろ考えたあげく、初心に戻ることにした。
  昔から、発売メーカーの違う同一アイテムの作り比べというのが好きだった。海外の小説で有名なヤツは複数の出版社から出ていることがあり、読んでみると訳者によってまったく味わいが異なることがある。また精密な図面であっても、作図者のセンスによって解釈が随分違っていたりする。スケールモデルの「作り比べ」には、それと似た面白さがある。メーカーによる解釈、表現の違いは例え実物を取材して模型化したとしても必ず出てくるもので、これはプラモデル特有の面白さではないかと思う。非常にシビアなマニアの方の中には、「新しく出た〇×社の☆□が決定版だから、他のキットはもういらない」といったコトをおっしゃる方もおられるが、それだとひとつのアイテムにつき、世界に一個だけ決定版キットがあればいいということになってしまって、私としては甚だ淋しい。チョットばかり出来が悪くても、いくつか同じアイテムの別のキットが存在したほうが、世の中タノシイ。これを、GMCでやってみようと思ったワケ。
  正直言って、タミヤが“ジミー”の発売をアナウンスした時には「何で今更……」と思ってしまった。前述のようにいくら「作り比べ」が好きでも“ジミー”は古くはトミーのクローズドキャブ、そしてエレール、イタレリと各社から出ていて、地味なアイテムでもあるし、今からタミヤが出して喜ぶファンがいるのだろうかと思ってしまったのだ。しかし実際に組んでみて、タミヤの新作“ジミー”の存在理由がおぼろげながらに理解できたような気がした。装輪車両、特に6輪8輪といった車両のモデルは、車体を裏返したときに丸見えとなる駆動系のデリケートな再現が模型としての見せ場にもなるのだが、そのぶん部品点数も増えて組み立てに困難を覚えることがしばしばある。しかもこのテの模型は完成後にすべての車輪がキッチリ接地していないと、それだけでリアリティーが半減してオモチャっぽくなってしまうという厄介なウィークポイントを持っている。ところが、軍用トラックの類は単品で見るよりいくつか作ってズラリと並べ、コンボイを組んだときに最大の魅力を発揮するアイテムであり、それが組み立てにウンザリして、一個作って「もーいーや」ってなことになる場合が多く、コンボイは夢と消え、本来の魅力を知らぬまま終わってしまうことが多かったワケだ。過去に発売された“ジミー”のキットもその例に漏れず、エレールのキットなどはAFVというよりは、まるで作れば実車の構造が理解出来る精密なカーモデルのカテゴリーに入るかのようなキットで、精緻な印象はあったが組み立てにはホネが折れた。――タミヤの“ジミー”は、そのあたりのウィークポイントを適度な省略と高度な技術によるパーツの一体化で実にうまく解消していて、いくつか作っても飽きない。これならオレにも1:35でレッドボール・エクスプレスが再現出来そうだと勇気を与えてくれる(笑)キットなのダ。無論、マニアックな視点で見れば細かい特徴的なパーツの省略が多かったりするのだが、そこまで気になるヒトは別売の各種ディテールアップパーツを買ってくれば済むコトである。


  では、イタレリの古いヤツはどうだったろう。高校時代以来作っていないので、コレを久々に作って2つ並べて喜屋コンに出してやろう、というタクラミである。イタレリからはクローズドキャブ型も出ているが、同じ形態のほうが比較しやすいと思ってオープンキャブを選んだ。写真でおわかりいただけるだろうか、どちらも164インチホィールベースのCCKW-353だが、タミヤは木製カーゴボディーでフィギュア満載状態の迷彩塗装。イタレリはM37ガンマウント装備のスチール製カーゴボディー型である。しかし、いやぁ失敗した。先にイタレリを作りゃヨカッタ。タミヤを先にやっちまったもんだから、イタレリのバラバラのシャシーフレームを組むのがヤケに面倒に感じてしまった。両車ともそれぞれバーリンデンのアクセサリー等を多少使ってはいるが、基本はストレイト組み。効果的だったのはタミヤのフロントグリルに付けたGMCの「銘板」だろうか。チョット大きい気もするけど。タミヤのほうの助手席サイドには、ホイールナッツの尾崎会長が出版されたCCKW-353写真集を参考に30口径機銃を増設してある。本来そういう用途の部品ではないので、実戦でこんな使われ方をしたかは謎。実は各種アクセサリーの積載も、この写真集の影響が大である。レストア車の写真集だから、装備品の積載方法は実戦ではどーこーと言うよりオーナーの趣味なので、そのまま真似るとレストア車の1:35モデルになってしまうのだが、カッコよさに負けて、ヤッてしまった……。さて、両方作っての感想だが、タミヤの“ジミー”は 作り易さもさることながら、大量生産された頑強な軍用トラックのマッシブな雰囲気を全面に押し出したデッサンなのに対して、イタレリは軍用車両とは言え、これは半世紀以上前に作られたクラシックカーなんですよという華奢さを表現しようとしたのではないか、と感じた。両方とも、悪くない。どっちも好きだな、オレ。実は喜屋コンには“イーガービーバー”の愛称にちなんで浅い河川を渡河中のディオラマにして出品しようと画策していたのだが、仕事でバタバタしてタイムアウト。簡単な展示ベースだけ用意しての参加となったが、何だか東京モーターショーに出たGMCみたいな感じになっちゃって、まったくオハズカシイ。次回こそはディオラマで、と毎回思うのだが、また仕事でダメなんだろうなぁ……。