IV号戦車H型(リニューアル・バージョン)
タミヤMM 1:35 製作(1996)/文 宮本 拓



『たまにはフツーの格好をしなさいっ』

  第二次大戦初期、短砲身75ミリ砲を搭載した火力支援用戦車として登場したIV号戦車は、ドイツ軍が強力な敵戦車と遭遇すると同時に、大規模な改装が要求された。その余裕のある車体容積を買われて対戦車用の長砲身に換装、装甲防御力を増して主力戦車へと変貌。新型戦車が登場した後も、その信頼性を買われてドイツ第三帝国崩壊の日まで戦車部隊の主力として戦い続けた老兵である。
  ドイツ軍戦車といえばパンターやタイガーが有名だが、IV号戦車の繊細でクラシカルなフォルムに惹かれるファンは多く、私もその一人である。


  ――1975年に発売されたタミヤの旧作MM・IV号戦車H型は、この時期のタミヤのキット全般に言える独特のアレンジによって、細部の寸法にシビアなマニアにはこっぴどく批評されたもんだが、その反面ニヒルに笑うカッコイイ戦車長のフィギュアや山のような予備キャタピラを含む豊富なアクセサリーが付属しており、またドラマティックな文章で綴られた実車解説は戦記物を読んでいるような楽しさがあったし、一個のプラモデルとして見た場合のパッケージング・センスは非常に優れていたように思う。私も中学、高校時代にはかなりお世話になったキットだ。このキットのおかげでIV号戦車、しかもH型が好きになった。
 みんな、これ改造してナースホルンとかスクラッチしてたんだよなぁ。タイヘンだ!
 94年になってタミヤから完全リニューアルのJ型が登場。これはもしやと思って、ぐぐっと我慢して待ってたら、やはりH型も出してくれた。ひゃっほ♪

  で、その後の専門誌の記事に目を通すと、キットの素性は大抵めちゃくちゃホメているのだが、作例はどれもこれもエッチングパーツやらレジン製エンジンやらでコッテコテにディテールアップしたものばかり。それはソレで、この車体に対する“愛”が感じられて素敵っちゃあステキなのだが、普通に作ったやつはタミヤのカタログ写真くらいしか見たことがない。

「……フツーだと、どうなのよ?」

  ほとんど意地になってのストレイト組みである。何せタミヤ純正のエッチングパーツすら使ってないもんネ。
  複雑なカタチをしているわりにはとにかく作りやすい。ドイツ戦車が好きでストレイト組みが好きなヒトなら3個同時進行でもぜんぜんOK。飽きる前に完成している。塗装やアクセサリーで気軽にバリエイションが楽しめるだろう。そんなテイストのキットだ。
  何となく手を加えたところと言えば、砲塔前面の照準用小ハッチを開状態にして変化を持たせたことと、コーティングを施した程度。シュルツェン、シュルツェン架もキットのパーツ。カッターナイフで、カンナがけの要領でもって注意深くカリカリ削って薄くしたダケ。キャタピラもキットのやつ。いいですよ、コレ。
 フィギュアはグンゼの別売品を使ってみた。もっと丁寧に塗ればヨカッタ……(-_-;)

  3色迷彩はヘタするとNATO軍塗装みたくなってしまうので、恐る恐る、でもフリーハンドで吹いて描いた。凸凹の多いモデルなので、若干きつめのドライブラシとウォッシングで仕上げた。


  私的に考えるこのキット唯一の欠点は、アクセサリーが旧作を超えられなかったこと。今の精度であれをやったら価格が倍になっちゃうんだろうし、ムリな注文ってのはわかっちゃいるが、砲塔側面ハッチから上半身を乗り出したベテラン戦車兵とか木箱とかいっぱい付いてるとよかったのになぁ。
  強いて言えばあとひとつ。インストの実車解説。旧版の解説は名文だった。あれは製作意欲をソソッた。最近のタミヤ・スケールモデルには、ぺらっとした一枚の簡単なものながら、実物の解説や戦歴を紹介したリーフレットが付属している場合がある。年少ファン、ビギナーのことを考えると、あれはいいサービスだ。その戦車をまったく知らない方が手にとっても、読めばすぐわかるような……例えば見開き2ページ、裏表で4ページ程度の実車解説で「コイツはこんなにイカすメカなんだぜ!」みたいな、イラストや写真満載で多少誇大な表現で書かれたノリノリの解説書みたいなのが入ってたってイイと思う。
  アクセサリーにしろ実物の解説にしろ、そういったソフトの部分の充実はゼヒゼヒ今後も続けていただきたいものだ。じゃないと小学生くらいの男のコ、誰も作んなくなっちゃうよ! ジャンルは何であれ、オマケってなぁ、ウレシイもんですよ。10年くらいとっといて、引き出しの中から出てきたりすると結構感動するもんネ(^^;)