

1989年度作品・自主製作8ミリ特撮映画『目覚めよと呼ぶ声あり』で使用されたミニチュア群である。
低予算の8ミリ映画ながら、スペクタクル・フルな見せ場を贅沢なほど用意したので、ミニチュアの数がハンパじゃなくなった。となると、ビッグスケールのものはとても揃えられない。昔から慣れ親しんだ1:35モデルの出番となった。レンズの問題、高速度撮影の問題などから、1:35というのは映画撮影において最小のサイズに分類される。それを、アップ用に使った。無茶もいいとこ。




現在でもたいして状況は変わっていないと思うが、1:35自衛隊車両モデルというのは極めて数が少なく、他のキットでゴマカしてソレっぽく見せることが必要になってきた。言ってしまえば、大道具さんが市販車両を改造して軍用車っぽく見せるハリボテのミニチュア版である。とにかく数が勝負なので、手元にあった使えそうなキット総動員で、様々なパーツを組み合わせてこしらえた。




ここに登場しているモデルの多くは、プラモの「トラック野郎シリーズ」などを改造したTEPスペシャル・ヴィークルである。今、改めて見直してみるとすでに絶版となったプラキットを惜しげもなく使っていたりして、やや惜しい気もする。この当時はまだタミヤ1:35のモーターライズキットが現役だったので、走る戦車は容易に作れた。またどの車両も「オリーブドラブ」と呼ばれる塗料の単一塗装で、陸自の車両は90年代に入ってからはグリーン/ブラウンの2色迷彩塗装が正式採用されているので、なんとも時代を感じさせるアイテムとなってしまったが、それも今となっては懐かしい思い出である。海/空ものもほとんどがプラキットの利用。川崎C−1輸送機は、メインスタッフとして活躍していた鋤柄君のこしらえたソリッドモデルで、かなりの重量があった。ヘリは1:24からロング用の、画面上では豆ツブほどにしか写らない1:72までプラキットで揃えたが、1:32以上のスケールのものはローターを回さねばならず、メインローターの中心軸からピアノ線で吊る仕掛けを作り、なおかつ吊った際にプルプル揺れないようにテイルブームを中心にウェイトを内蔵、調整してやるのがなかなか難しかった。今ならば機体だけ作って操演で飛ばし、回転するローターはCGで描き込んだほうがラクなんだろうなと思う。




――劇中登場する試作型自走対空レーザーシステム「VDLC」は、タンクトランスポーター改造の特殊車両という設定で、プラ板の箱組みとプラキットのパーツを組み合わせて作ってある。実のところ、その名称のアルファベットもカッコよさげな配列で適当に付けたネーミングで、低空進入する攻撃機もしくはミサイルを遠距離で補足、化学ガス・レーザー砲によって撃墜する……といった程度の設定しか考えていなかったのだが、90年代に入って発売されたウェーブの「HO(1:87)スケール・メーサー殺獣光線車(東宝映画『サンダ対ガイラ』他に登場)」のプラキットに含まれている架空の実車解説文には、85年度版『ゴジラ』に登場したハイパワーレーザービーム車とともに、ナントこのVDLCまでが「メーサー車の後継車両」として紹介されている! どなたが書かれたものか存じ上げないが、このようなマイナーな自主映画まで丹念にご覧になり、しかも作った本人が及びもつかなかったような詳細なメカ設定をスマートにまとめておられるあたり、感嘆すると同時に、製作者としてはちょっぴり照れてしまったのも事実。楽しい想い出をひとつ加えていただいたと思っている。もちろん、メーサー車のプラモも買わせていただきマシタ(^^)




※ これらのミニチュアに関しては自主製作映像集団TEPPROJECTの「SFXヒストリー」 の『目覚めよと呼ぶ声あり』の項でデザインワーク、撮影等に関して詳述してあります。 ぜひご覧ください。


★追補★
2001年の暮れ、文中にある「ウェーブ社製メーサー車のプラキットの実車解説』に関して、古典的プラモデル研究の第一人者として知られる高見敬一郎氏が運営されているサイト『プラモデルの王国』のBBSを通じて情報をいただきました。
VDLCに関する詳細な解説をお書きになったのは、山本直樹氏でした。
以下に高見氏経由で届けられたメッセージを転載させていただきます。
「山本さんは以前偶々その話題になっていた時にこの掲示板を御覧になり、改めて宮本さんには御挨拶差し上げたいと思われていたそうで、そのあたりに関する文面です。当初この掲示板に全文を載せてもらえれば・・・という事も言われたのですが、書き込みにすると結構長文なので、掲示板には概略を書いて、別途本文は宮本さんに手渡しをする事になりました。(高見氏より)」
―― 山本氏のメッセージです。
ウェーブのメーサーは当時社員であった私が担当したものですが、ガレージキットという性格上少量生産の高額商品となってしまいます。そこでせめてソフト面でフォローしたいと考えて、タミヤの88ミリ砲のボリュームのある実物解説のようなある種のオマージュとして企画したものです。ベースは私が昔HJ誌に連載していたU.W.Wという記事からメーサー解説を転載したもので、そこにその後封切りされたビオランテなどの映画の車輛を追記したものですが、実はその当時偶々とある特撮専門雑誌編集者の友人から見せてもらった作品が「目覚めよ…」だった訳です。その出会いのタイムリーさはもとより、自衛隊メカの描写の素晴らしさ、例えばビーム発射直後に爆発発電用?と思しき焼け爛れたカートリッジがゴロンと出て来るシーンなどに大いに感激した為、思わず解説にて言及してしまった次第です。
本来なら商業映画とはまた違った意味で、自主制作映画に対する引用の御断わりはきちんとすべきであったと宮本様以下スタッフの方々には御迷惑をお掛けしました事、お詫び申し上げます。
現実のメカニズムをしっかりと踏まえた上での魅力を持っていた東宝特撮メカが、とある時期からそういった地に足のついた部分が無視され始めたのではないかと感じていた時期に「目覚めよ…」を拝見し、一服の清涼剤を得た気が致しました(以上・内容要約)
……以上です。
これで、長年の疑問が氷解致しました。
迷惑なんてとんでもない。メーサーのキットを買い、解説書を読んだときの驚きと喜びは今でもはっきりと憶えております。
私達に素晴らしい想い出を提供してくださった山本さん、本当にありがとうございます。
また、仲介してくださった高見さんにも心よりお礼を申し上げます。
