
言葉は、難しい。
一時期、とある女性アナウンサーが「旧中山道」のことを「いちにちじゅうやまみち」と読んでしまったとか、「失意のどん底に……」を「失意のズンドコに」と読んでしまったというような噂がマコトシヤカにささやかれた。
仮にも専門の教育を受けたプロのアナウンサーがそんなことは言うまいヨとは思ったものの、自分の身近なところでも、知人が昔のテレビドラマや漫画で流行した「スポーツ根性もの」略して「スポ根もの」を何度試してもキチンと言えず、
「すこぽんもの」
と言ってしまうのを目の当たりにしてしまったりすると、もしかするとアナウンサーでもそんなことがあるのカナと思い直してしまう。
だいたいにおいて「すこ」の段階ですでに間違っているんだから、ここでやめときゃいいものを、なぜか「ぽん」まで言ってしまうのだからイキオイというのは始末におえない。
模型趣味の世界でもヘンテコな言い回しというのがあって、当サイトの「ScaleModel」のコーナーでもお馴染みのシャーマン戦車の“発音”などその好例である。
シャーマン戦車はエンジンの型式や車体の構造などによって、M4、M4A1〜A6のタイプに大別されるわけだが、コレを口に出して言うとき……
M4A1を「えむよんえーわん」
M4A2は「えむよんえーつぅ」
と、読むヒトが多い。
なぜ「4」が日本語の「よん」で「2」が英語の「つぅ」なのであるか?
ゴジャゴジャやんけ。
そのわりには、M4A3は「えむよんえーさん」と読んで「えむよんえーすりー」とは読まず、M4A4も「えむよんえーふぉう」ではなくて「えむよんえーよん」と読むヒトが多いのである。
これがよくワカラナイ。
まーそんな中、戦後型ジープの代表格M38A1“ブルドッグ”のことを、ちょいとマニアな人はわざと「さんぱーえーわん」とサラリと言ったりして、こっちのほうはチョットかっこよかったりするんだけれども。
昔はクルマの「ダットサン(DATSUN)」のことを、わざと「ダッツン」と発音するヤツがいた。ちょいと小粋というか、何か「乗り慣れてる」感じがしたものだが、今の少年たちに町中でダットサントラックを見つけて「あ、ダッツンじゃん!」なんて言っても、なぜこのおっさんはクルマ見て「だっふんだー」と言っているのかと思われるのがオチだろう。たぶん通じないんじゃないかな。
“ダットラ”だったら通じるかなぁ。怪しいな、やはり。
子どもの頃、いろいろな本を読んでいっぱしのミリタリー少年みたいになってくると、ドイツ軍戦車をドイツ語に近い発音で読んで得意になるヤツも出てくる。
タイガー戦車を「ティーゲル」パンサー(最近はパンターと言うが)を「パンテル」とか読んでみちゃったりして。
そのうちアルファベットもドイツっぽい発音にすることを覚えて、アーベーツェーみたいになり、パンサー戦車G型のことを「ぱんてるげー」とか言ってみたりする。
「ぱんてるげー」
何かカッコ悪いことに気づく。
当時の子ども番組の悪役「ドクトルゲー」に通ずるところがあって何かイヤになる。
しまいにゃ三号突撃砲G型を「さんとつげー」とか言ってみたりして、もはや原型をとどめぬのでナニが言いたいのかさっぱりワカラナクなってくる。
そう言えば、車両を意味する「ヴィークル」というのをわざわざ「びはいくる」と発音する人もいる。
これはもう昔のTV番組『帰ってきたウルトラマン』に出てきたコスモスポーツの特装車が「マットビハイクル」と呼ばれていたのに影響されているのだろうが……。
「vehicle」って「ビハイクル」と発音するのだろうか?
大昔のプラモデルで、フランス製装甲車「パナール」を「パンハルド」という商品名で売ったメーカーもあったが、これと同じで何かカンチガイしているような気がしてならないが、語学に疎いので正確なところはわからない。
以前は単に「ジャガー」と言っていたクルマが、最近では「ジャグワー」と表記されたりしている。同じ「ジャガー」でも、ジェット戦闘機は「ジャギュア」になっている。
ジャガーじゃ、ダメなのかね?
余談だが……。
昔、駆け出しのディレクターだった頃、低予算のレーザーディスク用カラオケビデオを乱作した時期があったが、あるとき仕事仲間のディレクターがちょっとしたドラマ仕立てのものを撮ることになった。
彼が考えたストーリーは、言ってしまえば「ヒーローもの」のコメディ版で、花屋の娘が地上げ屋にさらわれ、ヒーローが助けに行くと地上げ屋の人相の悪いあんちゃんが怪人に変身してしまい、ヒーローが怪人と戦うというものだったが、ディレクター氏はこの怪人のネーミングに困り、いろいろ考えた末、
「地上げ屋怪人、ジアゲヤー……ジャゲアー……。
あ、地上げ屋怪人・ジャアギュア、ジャギュアにしよう! 」
と、閃いた。
『地上げ屋怪人ジャギュアの巻』。
ちょっと天才かなと思った。
口に出して言う言葉と「表記」で違うことがあり、企業用PR映画などのナレーションを検討していると、
「この台本の“コンピューター”は“コンピュータ”にしてもらえませんか?」
と言われたりすることがある。
「トラクター」は「トラクタ」。
「コミュニケーション」を「コミュニケイション」。
「バーチャルリアリティー」を「バーチャルリアリティ」。
会社内で、そう書くようにと、決まっているらしい。
実際のナレーションの“発音”でもそのようにして欲しいと要望が出たりするが、基本的には出来るだけ大勢の人々に見てもらって自分たちの事業のPRをするのが目的なのだから、一般の人々の耳に馴染んだ言い回しで解りやすくするほうがよかぁないか? と提案するのだが、柔軟な考えを持つ企業の方だとあぁそのほうがいいと言ってくれるが、逆に「イヤ、うちの場合はこうしてますから……」と押し通されることも多い。
権威ある国語辞典に記された言い回しがすべて正しいのダとは言えない気もするし、ただ世界的に見てもかなり複雑な形態で、微妙なニュアンスまで再現出来る日本語の特性を考えた場合、言葉というのは「究極のコミュニケーション・ツール」なのだから、もう少し視野を広く持って検討したほうがいいと思うことが最近多くなったように思う。
……おっと、
「コミュニケイション・ツール」なのかな?
(文責:宮本 拓 200305)