"カタカナ"



  私は“CAMERA”のことを“キャメラ”と言ってしまう。
  若僧ディレクターの頃、一緒に組んで仕事をしてくださった撮影部の皆さんはほとんどが40代後半から50代のベテランで、大御所のお師匠さんについて長年腕を磨いてきた方々だった。歳の離れたスタッフと一緒に仕事をすると言うと窮屈そうに感じるかも知れないが、大抵の場合は「若い人と組んでモノ作るのは楽しいよ」などと言いながら、こちらが恐縮するほど気合いを入れてキャメラを回してくれた。彼らはごく自然に“キャメラ”と発音していて、現場で和気藹々と一緒に過ごしているうちに私もうつってしまったのである。しかし一般の生活の中で「そこのキャメラ取って」などというとヒドク気障(キザ)に聞こえるらしく女性に苦笑されたりするのだが、こればっかしは治らない。

  ――何年くらい前からだろう。所謂「ジオラマ」のことを「ダイオラマ」と表記する専門誌が登場した。“DIORAMA”を原語の発音に近く、そしてカタカナ表記しやすいように解釈すると「ダイオラマ」になるということらしい。原語に近い表記を一般化させることによって、単なる子供のオモチャ遊びという先入観を拭い去り、大人も存分に楽しめるアカデミックかつクリエイティブな趣味としてより確固たる市民権を得て、模型趣味のレベルの「底上げ」を図る努力……といったところだろうか。長く模型趣味に親しんでいる者として、この努力には拍手を送りたい。
  しかしながら……なかなか口に出して「ダイオラマ」と言えない私。どーも、チョット、その、テレるというか、カメラをキャメラと言ってしまう私だが、ダイオラマは何だか馴染めない。
  八百屋に行って、
「おっと奥さん、今日はいいトメイトゥが入ってるよーっ!」
「あらまぁ、綺麗なトメイトゥねぇ。いただこうかしら。ねぇオマケしてよぉ」
「ええっしょうがねえなぁ。よっしゃあ奥さん美人だし、トメイトゥもう一個オマケしちゃうよ!」
  ……こんな会話が脳裏をよぎる。

  私は「ディオラマ」という言葉が何となく耳に馴染む。またタミヤ模型は昔から一貫して「情景」「情景模型」という言葉を使っている。この言葉が私は好きだ。
  ディオラマの“作風”は日本人モデラーと欧米のモデラーでは随分と違うものだが、「情景」と言う言葉には、何か「日本人特有の模型の楽しみ方」をささやかに主張しているような心地よさがある。「スジボリ」「面取り」……外来語をうまく咀嚼して表現するのと同時に、日本人特有の表現方法も大切にしていければ、と思う。

(文責:宮本 拓 200106)