
小学校の頃は、よく「将来の夢について」なんていうタイトルで作文を書かされていた。20代後半の頃だったか、帰省しているときに幼なじみが遊びに来て、何かの探し物でウチの倉庫をガサゴソ引っかき回したことがあるのだが、そのときに小学6年生の「卒業文集」が出てきた。何を書いたかなんて二人とも忘れている。当時のことだから、手書きのガリ版というヤツだ。興味津々でページを繰ったが、当時12歳になったばかりの宮本拓クンは、「大人になったらハリウッドに行って映画監督になりたい」などと、顔から火が出るようなコトを筆圧全開、相も変わらぬ右上がりの奇妙な癖字でドウドウと書いていて、悪友の失笑を誘っていた。あれから四半世紀、確かに映像でメシを食ってはいるが、ハリウッドなんぞ仕事どころか観光でも行ったコトがない。
昔、一緒に仕事をしていた同年輩のディレクター氏は、今後の“夢”は?と聞かれて「ぼかぁね、アイドルになりたいんだ」と答えた。当時すでに30前、何かのサークルで知り合ったカミさんがいるという状況なのだが「俳優業もやってみたい」と言うならまだしも、言うに事欠いて「アイドル」になりたいときた日にゃ、私としては勇気って大切だなぁと教えられた気分になりつつも爆笑するほかなく、かなりヒンシュクを買った。
映画の学校で同期として過ごして以来、映画づくりの「戦友」として今なお付き合いを続けている某高山クンにも「将来の夢」があって、それをひどく気に入った私も同じ目標を生活の指針に掲げることにした。某高山クンの夢は「博士になりたい」というものだ。
しかも、ただハカセになるだけではなく、「ハカセになって、学界に復讐してやる!」と叫ぶのが目標なのである。ちなみに我々は学界とか学会というのがどんなものか、ちっとも知らない。ただ、とにかく白衣を着て片目にアイパッチをつけて使い古したパイプを握りしめつつ「おのれっ、見ておれ、学界にフクシューしてやるのだ!」と、叫んでみたいのである。某高山君は私より数歩リードしていて、日本ロボットなんたら学会というのに加盟している。これで、とりあえず復讐する相手だけは確保したわけだ。問題は、「何の理由で復讐するか」なのだが、コレはまだ決まっていないらしい。聞いたところによれば、この学会は年会費が一万円らしいので、これを延滞して学会を除名になるのが、いちばん手っ取り早い方法なのではないか?と提案した。それはいい考えだと彼も納得してくれた。逆恨みといえばそれまでだが、この際そんな些細なコトは気にしない。さて復讐の方法なのだが、この「事件の規模もしくは知的水準」というものを考えてバランスを取るためには、学会員の名簿を調べて会長のご自宅まで行き、ピンポン・ダッシュをしてみるのがいいのではないかという結論に達した。ただ二人とも運動不足で体力に自信がなく、100メートルの全力疾走も危ぶまれるので、自転車の使用も考慮に入れている。ちなみに、彼は35歳、私は36歳である。オトナの本気である。カッコいいなぁ。
オリジナルビデオムービー『VISUAL BANDITS』のプロデューサーである某VAPの某穂山クンは、昔は「アーティスト」を目指して様々なゲリラ的ライブ活動を展開していた。今思い返してみるに、まったく、一点の曇りもないほど解りやすい「若気の至り」である。
私よりも図体のデカイ彼はムッチムチのレザーパンツを履いて、Tシャツの上からルパン三世みたいな真っ赤なジャケットを羽織り、雪男怪獣ウーのように長髪を振り乱して飽くことなく熱唱していた。「お願い、山へ帰って!」であった。一度、彼が幼児の頃の写真を誇らしげに見せてくれたことがある。なんということだろう、その写真に写っている二つか三つの男児は、天使が降臨したならばまさにこんなふうだろうと思うほどに愛らしかった。顔色を失った私は、思わず目の前に座っているむさ苦しい毛むくじゃらの男と写真を何度も見比べてしまった。人って、壊れていくものなんだなと、このとき痛感した。こうして、夢は潰えていく……。
――さて、こんなことをツラツラと考えつつも、実は私にはちょっとばかり本気の「夢」がある。この商売でメシが食えなくなったら、潔く引退してタノシゲな模型専門店を開いてみたい、と思っているのである。友人も巻き込んでのプロジェクトで、スケールモデルは私が担当。アニメの脚本家氏もいるので、彼にキャラクターものをおまかせし、普通の工作用品の他に特撮映画でも使える特殊材料も取りそろえて、デリバリーもやる。駐車場兼遊び場を確保して、子供もオトナも、ラジコン等で遊べるスペースを用意する。夏休みには工作教室。場合によってはネット上で活躍されている諸先輩方……モーター駆動等の模型工作に詳しい方々を特別講師に招いて、子供たちに教えていただく。時折、昔取った杵柄というヤツで、プラモを使った特撮映像のプロモーションビデオを作って店内のビデオモニターで常設展示上映する……んーん、楽しそうだ! しかし、この夢を叶えるためには、私が「この商売で食えなくなったら」という条件が付く。それも困るが、こっちもヤリタイ。こう考えるのを「本末転倒」というのは、日本語として間違っているのダローカ?
(文責:宮本 拓 200105)