"キッチン・スタジオ"



  北烏山のこのマンション(どう見たって、ちょっと部屋数の多いアパートってとこなんだが、3階建て以上の賃貸住宅をマンションというらしい。ちなみにウチは3階)に引っ越してきた理由のひとつは、何だか妙チキリンな間取りでキッチンが広く、6畳の他に2畳ほどの不思議な張り出しがあるというポイントにあった。恐らく若い夫婦向けか、ちょっとばかしゼイタクな単身赴任向けで、ダイニングとしての使い勝手を考えてのことなのだろう。3部屋あるうちのひとつを書斎(仕事場)兼寝室、もうひとつを模型工作室、そしてキッチンのこのスペースをうまく工夫すれば、スチル等の撮影に使えるとふんで、これが決定打となっての引っ越しとなった。まぁ、独身のうちはこんくらい楽しんでおこうというコンタン。

  ――それ以来、様々な作品の収録やスチル撮影に活用されることとなった。
  映画『砂丘の残像』では、特に物の動きのないインサートカットをここで撮ったし、スカイパーフェクトTVの番組『ザ・シュミレイションズ』では、自衛隊の有事を想定した行動や第二次大戦の状況等をディオラマ再現して参考映像を撮ったりした。この頃から、この撮影スペースは友人たちから「キッチン・スタジオ」と呼ばれはじめた。
  私が一番やりたかったのはサイト更新用の写真撮影で、もともと模型を使った特撮情景写真が大好きなので、存分に撮影が楽しめるスペースとして利用したかったのだ。
  引っ越して数年、ただ大きめのテーブルを置いて撮影台にし、その下にいくらかの機材を詰め込んだだけの状態でキッチンスタジオは稼働し続けていたが、今年に入ってようやく大改装することができた。リサイクルショップから安価なスチール棚を買い求め、『VISUAL BANDITS』の全作業終了によって放置されていた各種撮影機材と、特撮に使ったストラクチャー類を引き取ってきて、新たに買い入れたホリゾントバック用のカラーペーパー等とともに収納。知人から照明機材を借りてセッティングして、いつでも好きな写真が撮れる、理想的な空間を作り上げた。我ながら結構本格的なスタジオである。そのすぐ横に洗濯物の乾燥機があり、すぐ後ろにチャブ台があるので食事のときは照明機材の位置をズラさなければならないのは、この際ガマン(^^;)
  ――大きな仕事もようやく終了。時間が出来たので勇躍サイト用の写真撮影に臨んだ。使用したキャメラは高校時代に貯金をはたいて買って以来愛用している初期のキャノンAE-1。これに安物のトキナー28-70ミリレンズとクローズアップレンズを準備。映画撮影用の1キロ灯をブラ下げ、500ワットのアイランプで補助。自作の模型……全長20センチに満たない1:35スケールの戦車モデルをメインに、f22まで絞り込んでの撮影である。アングルに凝ったり、ワザとバックを影にして、グラデーション付けちゃったりして。撮りあげた36枚撮りフィルム6本をホクホク顔で現像に出し、待つことしばし……あがった写真を見てみると、一枚残らず、ことごとく、ピンボケ!いや、ピンボケというのではなしに、被写界深度が浅すぎるのである。しかも、あれだけ絞っているのに露出が4倍オーバー。ぐしゃぐしゃ。これにはマイッタ。脱力感なんて言葉では形容しきれない、もはや極度の敗北感である。オレってこんなに写真ヘタだったっけ? いやいやそんなハズはない。理論的にオカシイ。どうやら、レンズがついにイカレてしまったらしい。
  で、写真好きの友人、桜井君に相談するとニコンF90ってのを28-70ミリレンズ付きで貸してくれた。初めて触る高級機種。こんな上等なもの、仕事でだって使わない。アリモノ勝負のヒトだから(^^;)
  自腹切って77ミリ経のクローズアップレンズを購入し、恐る恐る撮影開始。現像に出してみると……よ、よかった。ちゃんと写ってる! ナミダ目である。お世辞にもウマイ写真とは言えないが、これならばサイトに載せてもそう恥ずかしくはないだろう。
  ――これ以降、我がキッチンスタジオは絶好調で、ホリゾントはいつも張りっぱなし、照明の脚もセッティングした状態で、500ワットのライト2灯には色補正用のB5フィルターと散光用パラフィンが装着されたまま。いつでもスグに模型の撮影が出来るような状態である。
  これで、被写体が綺麗な女の子ならば言うことナシだが、いつもファインダー越しに見えるのは、無精ヒゲを生やした戦車長がハッチから顔を出した、イカツイ戦闘車両である。んーん、根本的な問題は、このへんにあるんだな、きっと(←何の?)



(文責:宮本 拓 200103)